結局のところ、やっていることの骨格は、スパイも民間企業も同じです。相手の弱点を見て、そこに合わせて取り込んでいく。ただし、スパイの場合は、その先にあるものが、単なる転職や商売ではなく、国家的な情報収集や工作活動だという点が違うだけです。
スパイというと、特別な訓練を受けた冷徹な工作員を想像する方が多いかもしれません。もちろん、そうした側面がないわけではありません。けれども、実際に情報を取る場面で最も重要になるのは、もっと人間的な能力です。
スパイが相手の好みや弱みを見抜き、それに合わせて接近の仕方を変えてくる、というのはすでにお話ししましたが、この中に、ハニートラップも入ります。
「自分の身近にもいそうな、きれいな人」が一番効く
ハニートラップは、確かに今も有効な手段の1つです。ただし、多くの人が思っているほど、それが常に主流というわけではありません。
あくまで、相手が異性に強い関心を持っている、あるいは遊び好きであることがわかっていて、その弱点を使えば情報が取れると判断した場合に使う手段です。スパイ活動全体の中では、数ある手法の1つに過ぎません。
しかも、ハニートラップというと、誰もが絶世の美女や映画のような派手な場面を想像しますが、実際にはそうではありません。
むしろ、あまりに現実離れした美女のほうが、相手に警戒されて失敗することが多い。常識的に考えて、自分に突然、元プロテニス選手のシャラポワのような美女が近づいてきたら、「これは何かある」と思うに決まっています。ぼったくりか、美人局か、何か裏があるのではないかと警戒するのが自然です。
現実のハニートラップはもっと地味です。その人の「ストライクゾーン」に入る人をあてがうのです。
派手すぎず、しかし魅力的で、しかも手が届きそうな距離感にいる。絶世の美女ではなく、「自分の身近にもいそうな、きれいな人」。これが一番効く。
“好み”にあわせた最適化
中国は、日本に住んでいる、あるいは過去に日本にいた中国人の膨大なデータベースを持っているとされます。その中には、日本語が堪能で、日本人の好みや会話のツボを理解している人材もいる。相手の好みに合った人物をハニートラップ要員として連れてくることも理論上は可能です。