なぜアマゾンはメラニア大統領夫人のドキュメンタリーを制作するのか? その背景には、企業としての成長を加速させるための「したたかな計算」があった。巨大テック企業が政治権力に接近する背景を、池上彰氏の新刊『AI時代に自分の頭でどう考える?:奪われるのは仕事か、思考か』(Gakken)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目)
◆◆◆
巨大テック企業と政治が結びつく
AIに代表されるテクノロジーと経済の問題を考えるとき、避けて通れないのが政治との結びつきです。
とりわけ最近のアメリカの状況を見ていると、巨大テック企業の経営者たちが、政治権力に露骨にすり寄り、結託する姿が浮かび上がってきます。
たとえば、テスラやスペースXを率いるイーロン・マスク氏です。彼は2024年のアメリカ大統領選でトランプ氏に巨額の支援を行ない、選挙期間中には自身のSNS「X(旧・ツイッター)」を通じて、強い政治的メッセージを発信し続けました。
なぜマスク氏はトランプ氏に接近したのでしょうか。もちろん、本人にしか本当の動機はわかりません。しかし、多くの専門家が指摘しているのは、巨大テック企業にとって、政治との関係がますます重要になっているということです。
たとえば、テスラにとっては電気自動車政策や補助金、宇宙事業を行なうスペースXにとっては政府との契約、通信事業のスターリンクにとっては各国の規制や安全保障政策が、企業経営に直結しています。つまり、巨大テック企業はもはや単なる民間企業ではなく、国家レベルの政策やインフラと深く結びつく存在になっているのです。
アマゾンはトランプ氏の妻であるメラニア夫人のドキュメンタリー映画を製作し、日本円にして数十億円とも言われる巨額の出演料を支払いました。これも単なるエンターテインメント作品の製作とだけ見ることはできないでしょう。
