「イギリスではいま、リフォームUKという右派ポピュリズム政党が人気です。支持率は労働党、保守党を上回り、伝統的な二大政党制が崩れかけています。リフォームUKが提案する移民政策は、永住権を取り上げ、高年収の移民にのみビザを発給するというもの。移民差別を装った階級差別の側面もあると思います」
ブレイディさん自身は合法移民だが、同じ合法移民の中にも排外的な考えが広がり始めていることに驚いたという。
「不法移民が増えることによって、自分達の立場も脅かされるかもしれないと、排外主義に走る。でも、排外主義が勢いを増せば、移民法がどんどん厳格化され、気がついたら自分も不法な移民になっているかもしれない。そういうことへの想像力がないんです」
一方で7月、イギリスでは新しい首相が誕生した。労働党のバーナム首相だ。
「彼はイギリスの政治家では珍しく人気が高い。というのも、人々の政府への不信が高まり、中央のエリート政治家は信頼されないのですが、彼は北部マンチェスターの市長として活躍して、人気が出た人なのです。北部はアメリカでいうとラストベルトのような地帯で、グローバル化から取り残されていた場所なんです」
期待は高いが、英国内の貧困はすでに深刻だ。
「私は食料品を配るフードパントリーでボランティアをしているのですが、看護師や教師など普通に働いている人が助けを求めに来るのです。でも、ボランティアをしていて希望を感じることもある。思想的に相いれない人々でも、一緒に働くうちに案外うまくいって、互いに考え方が変化していくんです。人間は本来、相互扶助で生き延びていくのだと強く感じます」
1965年、福岡県生まれ。96年から英国ブライトン在住。2017年、『子どもたちの階級闘争』で新潮ドキュメント賞、19年『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で毎日出版文化賞特別賞ほか受賞。
