東京下町、谷根千のレトロな街に、小説家の嶋津輝さんは暮らしている。築年数を重ねた一戸建ての窓からは、かつて飲食店だったという長屋の面影が見える。台所にはガラス作家、ピーター・アイビーのガラス器が静かに光り、壁には北アルプスのパノラマポスター。そしてあちこちに、猫の気配がある。直木賞候補作『襷がけの二人』が文庫化されたのを記念して、猫との日々、執筆への向き合い方、そして小説に込めた思いをご自宅で伺った。
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猫とともにある家
――今年7月にNHK Eテレで放送されたドキュメンタリー番組「ネコメンタリー」では愛猫・三九(みく)ちゃんとの暮らしが放送されました。今日はなんと、新しい2匹の子猫たちもいますね!
嶋津 たまたま譲渡会(動物たちと新しい飼い主をマッチングさせるイベント)をやっているところに通りかかって、半月後にあらためて出向いて、そこで出会った保護猫の兄妹なんです。まだトライアル期間中でして。うちに連れて来てから丸1週間になりますが、子猫は順応性が高くて、早くもわが家になじんできています。もともと私の実家が猫屋敷のような家で、猫がいる環境でずっと育ったのですが、大切な命をしっかり守らなければならないので、やはり自分で飼うのは緊張感が全然違います。
――もともと飼っていた成猫の三九ちゃんは、3歳の女の子ですね。人間でいえばアラサー(30歳前後)くらいでしょうか。三九ちゃんと子猫たちの関係はいかがですか?
嶋津 三九ちゃんは、子猫がいる時間帯は、警戒してこのリビングに入ってこなくなってしまいました。階段の途中から「ウー」ってうなっています(笑)。
三九は前の飼い主さんが生後3ヶ月半のときに連れてきてくれたのですが、飼い主さんが帰って1時間後には私の足に寄りかかって寝ていました。「警戒心が無くて、どこに行っても緊張しない子なのかな」と思っていたら、成長するにつれて自我が段々と芽生えてきて。
運動神経はすごく良いんです。あるとき、獣医さんに連れて行こうとキャリーバッグに入れようとしたら、足を伸ばして踏ん張ってガンとして入ろうとしない(笑)。結局、ケージの入口が広くて彼女を入れやすい、大きなトランクケースを買うはめになりました。それをガラガラと引いて病院まで歩いて連れて行くんですが、道中はもう街中がざわつくくらい絶叫しまして(笑)。


