絶景の滝と“言い伝え”
そして、やっとの思いで樽谷の滝にたどり着いた。落差数十mはあろうかという立派な滝は、この立地も相まって、とても神秘的に見える。こんな絶景を独り占めできるというのも、贅沢な話だ。
最初に“樽谷の滝5.8km”の看板を見かけた時、まさかこんな状況に追い込まれるとは夢にも思わなかった。ポップな滝のイラストが憎らしく見えてくるが、神秘的な滝を前にすると、そんなことを気にする自分はなんてちっぽけな人間なんだ、と思えてしまう。
しかし、私と同じように滝のイラストを見て行ってみようと思った人は、これまでにも少なからずいたはずだ。そのうち何人が滝にたどり着いたのかと思うと、ここは人を選ぶ観光地なのかもしれない。選ばれし者だけが見られる立派な案内板が立っており、滝の説明が書かれていた。
・高さ50mから流れ落ちる滝の眺めはすばらしく、紅葉の頃は格別です。
確かに、ここの紅葉はとても綺麗だろう。秋にまた来てみたいと思える景色だった。そして、こんな言い伝えも記されていた。
・その昔、きこりが臼の材料にするため、木を切っては滝壺に落として集めていた。
・すると目の前に、笛を奏でる美しい樽姫が現れた。
・笛の音に聞きほれるうちに、つい眠ってしまったきこりが目をさました時には、姫も滝壺に集めた木々も跡形もなく消えていた。
・そんな言い伝えの残る神秘的で美しい滝です。
良い話のように書かれているが、せっかく伐り出した材木が全て消えてしまったのでは、たまったものではない。盗賊が睡眠薬を盛ったのではないか、などと邪推してしまう。
道のりは大変だったが、とても良い滝を見ることができた。ポップなイラストに騙されて酷い目に遭ったことが、とても心地よく感じられた。行きがかりの展開に身を任せて過ごす時間は、何ごとにも替えられない楽しさがある。
岐阜県揖斐川町にある樽谷の滝、ぜひお勧めしたいところだが、実際に訪れる際には川の水量が多い時は無理せず引き返すなど、自己責任で安全対策をしっかりして挑んでほしい。長靴の装備とヤマビル対策もお忘れなく。




