隧道(ずいどう)という言葉をご存知だろうか。トンネルと全く同じ意味の日本語だが、言葉の響きが良いことから、我々道路愛好家の間では「トンネル」よりも「隧道」を使うことが多い。

 隧道の中でも特に魅力的なのが、コンクリート等で固められていない素掘り隧道だ。もちろん、安全性や安定した交通の確保といった面では、近代的なコンクリートのトンネルが良いに決まっている。しかし、素掘り隧道には人の手により掘られた生々しい痕跡が残り、先人が苦労して山に穴を開けた往時の姿を想像することができる。

 今でこそトンネルは行政や企業が造るのが当たり前になっているが、戦後まで地域の住民たちが機械装置にたよらず、自分たちの手でトンネルを掘ることも少なくなかった。集落から山の向こうの畑に行くため、あるいは子供たちが安全に学校に通えるようにするため、自分たちの手で、クワやスコップだけでトンネルを掘っていた。それが素掘り隧道として、今も全国に残っている。

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「千葉県の房総半島」「大分県の南部」「静岡県の掛川市周辺」に共通する特徴

 素掘り隧道は、実はそう珍しいものではない。統計データは存在しないが、全国に少なくとも1000箇所以上はあるだろう。そして、素掘り隧道が特に多い地域がある。千葉県の房総半島、大分県の南部、そして静岡県の掛川市周辺だ。

房総の素掘りトンネル 鵜原理想郷にある真四角のトンネル

 特定地域に素掘り隧道が多い理由としては、起伏の激しい地形や昔から人の暮らしがあったこと、交通の要衝として多くの道が存在していたこと、そして、素人でも掘りやすい地質であったことなどが挙げられる。

 静岡県の掛川市は、東海道が横断し、遠州灘から信州へ海産物等を運び込んでいた“塩の道”が縦断する。掛川市周辺には泥岩層がみられ、これも素掘り隧道が多く掘られた理由だろう。

宇刈里山公園付近から探索スタート

 そんな掛川市とお隣の袋井市にまたがるエリアに、通称“四連隧道”がある――。