政府や企業からは、期待の声が寄せられている。

〈健康管理の努力と引き換えに、保険料の値引きを受けるのは当然の権利だ〉
〈国民が、食事や睡眠や運動に気を使うモチベーションが上がる良い制度〉
〈年々国家財政を圧迫する医療費を下げるためには、やむをえない〉

だが本当にそうだろうか?

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不健康が「国家への背信」となる社会

「善意の割引」に見える中で、「健康データを差し出さない国民や、不摂生な人間には高いコストを課す」という社会的選別が始まっていることは、見落とされている。

この健康分野における選別は、自治体レベルでも進んでおり、多くの市町村が、歩数に応じて住民にPayPayなどのポイントを与えるシステムを導入中だ。

政府は、PHRを「早期発見・早期治療」に使うことで、年間130兆円という膨大な社会保障費を抑えるという。

PHR構想が完成に近づくにつれて、不健康は社会保障費を増やす「国家への背信」となり、スマートウォッチはその証拠を24時間刻み続ける「デジタル監視装置」になる。

かつて薬を飲むか飲まないかの問題は、個人の「意志」と「プライバシー」という聖域だった。

だが今、その聖域も、テクノロジーによって扉がこじあけられつつある。

例えば、大塚製薬と米プロテウス・デジタル・ヘルスが共同開発した「デジタルメディスン」は、砂粒サイズのセンサーが埋め込まれた錠剤が胃に到達すると、センサーが胃酸に反応して微弱な電流を発生させる製品だ。

温かい言葉のウラにある管理社会

「服薬完了」の信号が、皮膚に貼られたパッチを通してクラウドへ送られる。今までのように本人や家族が薬を飲んだ記録をつけなくても、自動的に体内から報告されるので安心だ。

決まった時間に薬を飲むのが面倒だったり、一人暮らしでどうしても忘れてしまう人には、マイクロチップ社が開発を進めている「埋め込み型投薬デバイス」が良いだろう。

こちらは一度体内に埋め込めば、外部から操作して、数十年の間、薬を自動放出してくれる。ついでに日々の歩数や心拍数、睡眠時間といった生体データと組み合わせれば、24時間365日の身体管理システムのでき上がりだ。