静岡県沼津市などで女性2人が犠牲となった「静岡2女性殺害事件」。犯人の桑田一也死刑囚により実の母親を殺められた被害者長女が、事件から10数年の時を経て、初めて当時の記憶を語った。ノンフィクションライターの高木瑞穂氏の文庫新刊『殺め人』(鉄人社)より、その肉声をお届けする。
「良きパパ」として記憶に刻まれた男の素顔
2024年6月、被害者・久松紘子さんの長女・結海さん(仮名、20代前半)は、事件以来初めて当時を振り返った。血はつながっていないが、桑田は母が亡くなるまで沼津市の自宅アパートで家族として共に暮らしていた。
「母が結婚、離婚を繰り返したなかで、桑田は、父親らしいことをしてくれた唯一の人でした。私のなかでは『良きパパ』だったんです。だからこそ、なんで殺しちゃったんだろう、という思いがあるんです」
小学1年生のころ、授業が終わると桑田は車で学校まで迎えに来てくれていた。友達のことや給食のメニューを話しながら帰る道中、家では宿題を見てもらった。そうした日常の記憶が、結海さんの中で桑田を「良きパパ」として強く刻み込んでいる。
「そこだけ考えると、別に殺しをしてなければいい人だったし、っていう」
その言葉が持つ重さは、事件の残忍さと「家族」としての記憶が同居する複雑な胸中を映し出している。桑田の実像は、結海さんが語るような「良きパパ」の顔だけではなかった。
離婚届を改ざんして紘子さんと再婚しながら、元妻とも何食わぬ顔で暮らし続けるという「いびつな二重生活」を送っていた男は、2005年には別の女性をも殺めていたことが、後に明らかになる。
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【本編はこちら】妻子がいるのに“他の女性と同棲”、「金を返せ」と迫る彼女の首を絞めて殺害…《静岡2女性殺害事件》43歳男の犯罪が「5年間」もバレなかった理由(平成17年の事件)へ続くーー。
