さらにいえば、もっと文字通りの意味も重なっていました。当時、東畑さんが所属している学会でちょうど選挙が行われていた時期で、しかもその時期は、映画『教皇選挙』が話題にもなっていた。だから彼の中で、そのカードは彼をとりまいている政治(選挙)の話でもあるという感覚が強くあったようです。
こうした複数のレイヤーが、象徴的に、一枚のカードの中に同時に表れてくる。そのこと自体がとても印象的でした。
このように占いというのは、象徴が与えられることで読みが立ち上がっていく側面があります。ちょっとしたきっかけやヒントがあることで、そこから解釈が自然に広がっていくのです。東畑さんとの対談は、表向きはその内容をぼかしたものではありましたが、水面下ではそのカードの象徴する現実が、彼との間である程度共有されていたように感じます。
自分の中のモヤモヤをはっきりさせていく
そうやって、占いの場では、ひとつの象徴にいくつもの意味が折り重なっていく。自分の中でバラバラに存在していたものが、「占い師」という他者を通じて外に出されることで結びついていきます。先の例でいえば、自分はその象徴(教皇)のもとにいる存在だと思っていたのに、やがて自分自身がその象徴(教皇)的立場を担う側になる、といったように、別々だと思っていた事象が、実はつながっていたと気づく。
だから占いとは、当たる/当たらないといったピンポイントの問題ではなく、自分の中の曖昧なものやモヤモヤしているものを、はっきりさせていくプロセスだといえるのです。
ただし、東畑さんの例はあくまで対談のなかでのデモンストレーションだったので、深いところまで突っ込んで話してはいません。ここにあげた解釈は、かなりの部分、僕の中のイメージです。もしさらに深くお話ししていたら、きっとここには書けないようなよりプライベートなことも心に浮かんでくることになったのではないかと思っています。
占星術研究家、翻訳家
1968(昭和43)年、京都府生まれ。魚座。国際基督教大学大学院修士課程修了。占星術研究家・翻訳家。英国占星術協会会員、日本トランスパーソナル学会理事、東京アストロロジー・スクール代表講師。主な著訳書に『占星術の文化誌』(原書房)、『タロットの秘密』(講談社)、ヒルマン『魂のコード』(朝日新聞出版)ほか。占星術への心理学的アプローチを日本に紹介して、従来の占星術のイメージを大きく塗り替えた。
