私たちの世代の経験をスクリーンに再現する
――子供の頃、どんなエンターテインメントや芸術に触れて育ったのですか?
監督 映像関係の仕事をしていた父からの影響が大きく、文学やチベットの神話などをたくさん読みました。日本の文学作品も好きで、特に村上春樹や川端康成が好きです。
大学生になると、音楽、特にロックが好きになりました。大学時代には、チベット初のロックバンドのドキュメンタリーも撮っています。“天杵楽隊”というバンドです。私は彼らの音楽を聴きながら育ったので、ロックが好きだった経験も映画監督としての私に何らかの影響を与えているかもしれません。
大学に入る前は学業のプレッシャーが大きく、文学や雑誌に触れることのほうが多かったのですが、大学生になってからは映画も好きになりました。
――映画監督を目指すようになったきっかけは?
監督 大学の専攻は広報関係で、副専攻でテレビ演出を学びました。そこでドキュメンタリー制作を教わる機会があったのです。その後、大学院で映画を学び、映画の道に進みたいと思うようになりました。
卒業制作として撮った短編映画の中にもサムキが登場します。何人かでテーブルを囲んでチベットの歌を歌う場面を撮影している時、精神的な高揚を感じたことをはっきり覚えています。自分が子供の頃から感じてきた匂いや雰囲気、そうしたものが目の前に広がるのをモニター越しに見た時、とても感動しました。私たちの世代が共有してきた経験を、スクリーンに再現できたと感じたのです。感情が動く瞬間を生み出せる、これこそが映画の魅力だと思いました。映画を撮り続けたいと思うようになったのは、あの瞬間からです。

