ロウ・イエ、ジャ・ジャンクー、成瀬、小津
――影響を受けた映画監督はいますか?
監督 中国の監督では婁燁(ロウ・イエ)や賈樟柯(ジャ・ジャンクー)、日本の監督では『女が階段を上る時』の成瀬巳喜男、小津安二郎、是枝裕和、最近では三宅唱、濱口竜介、イランのアッバス・キアロスタミ、トルコのヌリ・ビルゲ・ジェイランといった方々の作品が好きです。いろいろな監督から総合的に影響を受けていると思います。
――『リンカリンカ~あの夏の先』を見て新鮮だったのは、都会的なラサの街並みや若者たちの生活です。一方で、チベットの伝統的な風景や文化が変化していくこと、失われていくことを残念に思う人もいると想像します。監督は、今を生きるチベットの若者の姿やラサの様子を映画で記録することに、どんな意義を感じていますか?
監督 これまでのチベット映画の中に、私たちが暮らしている街や経験してきた成長過程を見たことがなかったので、それをスクリーンに映したいという衝動がありました。今のラサの姿や暮らしを記録しなければ、私たち世代の記憶が失われてしまう。映画は現在を映し取りながら本質的な真実を表現するものだと思うので、映画を通してそれらを記録することには意義があると考えています。
現在のチベットの子供たちはTikTokで遊び、ショートドラマを見て育っています。文化は本来流動的ですし、伝統文化も不変のままではいられません。こうした状況の中で、伝統文化をどうやって守りつつ革新していくのかは、映画を通して考えていきたいテーマの一つです。
――近年、漢語の映画では、家父長制やさまざまな抑圧からの女性の解放を描いた作品が増えているように感じます。チベットの文化圏でも、こうしたテーマは話題になっていますか?
監督 やはり、とても注目されています。特にアムド地方(青海省全域と甘粛省、四川省にまたがる地域)のほうで、フェミニズムに関する話題がよく議論されています。牧畜地域の女性たちが都市部へ仕事をしに行くようになり、家にいることを望まない女性が増えたことで、男性たちが困惑しているというのです。この話をしてくれたのは、この傾向をテーマに短編を撮ったチベット族の男性監督です。彼は「フェミニズムは時々、極端になる」と感じているようで、私と議論になったことがあります。

