ソフト・オン・デマンドが目指す“AIの融合”

 小野は話す。

「2020年代になって、うちの会社でも新しい技術を使って新ジャンルを作れないかと模索しています。その時にメタバースや仮想通貨と共に出たのがAIだったんです。有名女優さんの静止画をAIで好きなシチュエーションに変えられるサービスを提供しました。2023年のことです。

 長期的には、ユーザーが自分の好みに合わせて作品を自由に生成する時代の到来も想定しており、AIという不可避な技術を正当に管理・活用しながら、“実在する女優”と“本物のエロ”にAIを融合させ、次世代市場でも独自の地位を確立したい考えです」

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 現在、ソフト・オン・デマンドのAI活用は、作品全体というより、ロケ映像に映り込んだ「通行人の顔への自動モザイク」「車のナンバープレートの消去」「局部へのモザイク入れ」などが主だという。

 中国などではAIによってプロットから人物、そして背景まですべてを作るAIドラマが話題を呼んでいるが、それに比べると日本のAV業界の取り組みはそこまでに達していない。一体なぜなのか。

AIがぶつかる壁

 同社の実験的なAI企画に携わったのが、2000年代初頭に中国から日本に留学し、現在はAI関連企業の代表を務める清水健(仮名)だ。

 清水によれば、AIでアダルト動画を作ろうとすれば、オープンソースAIをベースにした専用のローカルAIを作る必要がある。

 ここで起こる一つの問題が、ローカルAIに学ばせるアダルト動画の学習素材が十分でないことだ。それゆえ、性行為に関する細かな動き、吐息、体毛、音などを自然に生成できず、実写同様のクオリティーにまでは到達できていないという。

 個人開発者の中には、AIの精度を上げるため、1000人分の女性器のデータを集めて学習させて精度を上げている者もいるそうだ。ただ、データの権利の問題もあるため、「合法的」な生成には高いハードルがある。

 また、視聴者がアダルトコンテンツに細部のリアリティを求める傾向にあることも障壁になっている。

 たとえば中国で制作される完全AIのアクションドラマでは、視聴者は武器、スピード、効果音、背景など様々なものに注意を向けて楽しむので、登場人物の動きに多少AIっぽさがあっても大して気にならない。40年前の特撮映画が今でもそこそこ見られるのも似た原理だろう。

©AFLO

 一方、アダルト動画では、視聴者が登場人物たちの肉体の細かな動きのみを注視するため、些細な違和感があるだけでリアリティを感じられなくなる。つまり、アダルト動画の場合は、AIに求められる再現性がより高まるのだ。

 そのため、現在、日本国内のメーカーがリリースしている「AIポルノ」の大半は、一からAIで生成した動画ではなく、実は実写の作品をベースにして、顔や身体の一部だけをディープフェイク技術によって置き換えたものだそうだ。

 とはいえ、AI作品を作るために、ベースとなる実写作品を制作するのはコストパフォーマンスが悪い。そこでほとんどのメーカーは、自社の過去作品を持ち出し、そこに出演している女優に承諾を取り、顔など一部をAIで入れ替えたものを「AI作品」としてリリースしているという。

 小野の言葉である。

「実写に顔だけを置き換えたAVは少しずつ増えている印象です。ただ、同じ業界の人間からすれば、『あ、これはあの作品の女優さんの顔を入れ替えただけだな』とわかってしまうこともありますね。

 しかし、女優さんの顔を消して、AIで置き換えるというのは、あまりにぞんざいに扱っていますよね。うちのようなメーカーは、女優さんへの敬意をなくしたら仕事はできません」