メタバースの中に秘密の部屋があって…

 日本のメーカーの動向とは反対に、海外のアダルト配信サイトでは、AIによって生成されたアダルトコンテンツが爆発的に増えている。

 筆者の調べでは、2026年8月現在で、Pornhubでは「AI生成」のカテゴリで9万4000タイトル以上、XVideosで「AI」カテゴリは約3万2000タイトルもある。もはや一つのジャンルとして樹立されたと言っていい。

 背景には、AIポルノの制作者の違いがある。海外のAIポルノを作っているのは、AIベンチャー、数人のエンジニアグループ、あるいは個人のAIクリエイターだ。

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 彼らはアダルトコンテンツを生業としているわけではなく、AI技術の実験場として認識している。それゆえ、日本のメーカーのように法律、売り上げ、出演者への忖度などを気にせず、技術の腕試しとしてAIで実験的な作品を量産している。AIポルノ単体でビジネスをするのではなく、そこで認められることによって別の仕事を受注するというスタンスなのである。

 視聴者の層もまったく違う。日本のメーカーが作ったAIポルノを見ようとすれば、視聴者はそれに数百円から数千円の料金を支払わなければならない。しかし、海外のAIポルノは無料で公開されているため、視聴者は気軽に、中には面白半分に大量の動画を見ることができる。それによってAIポルノの制作本数も桁違いに増えていくのだ。

 AIによって、今後アダルトコンテンツはどう変わっていくのだろう。業界人の注目が集まっているのはメタバース(3次元の仮想空間)だそうだ。

 メタバースには、VRとセットになった空間トラッキング、会話型エージェント、リアルタイム多言語音声、リアルタイム監視など、AI技術が深く組み込まれている。某VRにおける個人間コミュニティでは、すでに16点トラッカー等を体に装着し、アバター同士のバーチャルなセックスが可能になっているという。高い技術を持つプログラマーたちが趣味を兼ねて自主的に制作し、共有しているようだ。

メタバース総合展の光景 ©EPA=時事

 小野は話す。

「メタバースの中に、ホテルみたいな密室の空間があり、限られたメンバーしか入れないようになっているんです。そうした空間で、利用規約から外れたバーチャルなセックスをする人もいるみたいです」

 そこでは、腕や口が何本も生えて様々な場所を同時に愛撫する、性器が透明化して体内のピストン運動が可視化されるといった、現実の肉体では不可能な行為もあるようだ。

 昔は、特撮を用いたアダルトビデオやアダルトアニメでしか表現しえなかった架空の性行為が、高度な技術を使って疑似体験できるようになっているのである。かつてそれらを欲した愛好家がいたように、こうした仮想体験に没頭する人たちが生まれても不思議ではないはずだ。

 AIによって、仮想空間でインタラクティブに性を消費する未来が、もうすぐそこまで来ているのである。

 ここまで見てきたように、アダルトコンテンツは、AI技術が組み合わさったことで、大量消費や、AI制作の時代を迎えつつある。

 懸念すべきは、このビジネス競争の軍配が、国内メーカーではなく、日本の法律の外で制作された粗雑な動画を集めた海外のアダルト動画配信サイトに上がりつつある点だ。

 冒頭で述べたように、日本の思春期の若者たちは、こうした動画を小中高生の年代から目にしている。無限のレコメンドによって浴びるように見ていれば、歪んだポルノの世界が彼らの「性のスタンダード」になる危険もあるだろう。さらにメタバースの世界でも、つながるコミュニティによっては逸脱した性体験を味わえる場になりうる。

 海外から押し寄せる圧倒的なポルノの洪水を前に、家庭や学校で性をどう規制し、教えるべきなのか。私たちはそのことにもっと危機感を持つべきなのかもしれない。

INFORMATION

本連載では、「若者社会におけるAIの光と影」をテーマに取材を進めています。その中で「AIによるショート動画などのAIスロップの大量生産に詳しい方」「推し活アプリやAIパートナーへの課金に悩まれている方」「AI教育・AI保育の課題に詳しい方(教育・保育者含む)」を探しています。

取材に協力していただける方は、簡単なプロフィールと提供いただける情報を明記の上、著者・石井光太氏のホームページから連絡下さい。

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