8月18日、米トランプ政権は、ICC(国際刑事裁判所)の所長・赤根智子氏を経済制裁の対象に加える、と発表した。2024年11月、ICCはガザ地区における戦争犯罪や人道に対する罪の疑いでイスラエルのネタニヤフ首相に逮捕状を発行。トランプ政権はこの件をはじめ、米兵の戦争犯罪捜査などに対してICCに強く反発しており、今回の赤根氏への制裁はその報復と見られている。

 検事出身の赤根氏は、法務省からICC裁判官選挙への立候補を打診されたのがきっかけで18年にICCの判事となり、24年3月、日本人で初となるICCの所長に選出された。

ICCの赤根智子所長 Ⓒ文藝春秋

 独裁者たちからの不当な“威圧”に毅然と立ち向かう赤根氏とは、どのような人物なのか。昨年6月に上梓した著書『戦争犯罪と闘う 国際刑事裁判所は屈しない』(文春新書)の担当編集者である鳥嶋七実が、その素顔を語る。

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「私が死んでも代わりはいる」

 赤根さんの存在を初めて知ったのは、ロシア政府から指名手配されたと大きく報じられたときでした。「私が死んでも裁判官の代わりはいる」と話されている姿を見て、随分と肝の据わったかっこいい方だな、と感じたのを覚えています。国際機関に勤める女性という面も、同じ女性として興味が湧きました。

 それまで国際的な事件を取り扱う裁判所といった漠然としたイメージしかなかったICCについても調べてみると、組織で働く職員に制裁が科されていたりするという。そこで赤根さんに、ご自身についてはもちろん、ICCという組織の成り立ちや存在意義についても一冊でカバーできるような本を執筆していただけないか、とご依頼をしました。その後、何度かやり取りを重ね、24年の暮れに「年始に日本に帰る予定があります。執筆は難しいかもしれないですが、聞き書き(インタビューを行い、言葉を活かして文章化する手法)ならお受けできるかもしれません」とお引き受けいただけたのです。