近年、ドラッグストア業界の再編が著しい。

 ツルハとイオン系のウエルシアの統合によって売上高が2兆円を超える巨大企業が生まれるとともに、存在感を増しているのが「フード&ドラッグ」と呼ばれるスタイルだ。食品を安く販売して集客し、医薬品や化粧品などの「ついで買い」につなげる業態である。

ウエルシアと統合したツルハ(公式サイトより)

 このフード&ドラッグを手掛ける企業で注目なのが、北陸発祥の「クスリのアオキ」だ。同社はもともとイオンと業務資本提携を結んでいたが、なぜかツルハとの統合に反旗を翻すように関係を解消している。

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 なぜ、地方の中堅チェーンに過ぎないアオキは、小売りの盟主であるイオンを切り捨てるような決断を行ったのか。今回のポイントは3つあると考えている。

イオン陣営にとって、アオキは手放したくない“虎の子”のはずだった

 まずイオン陣営には、現状広域展開可能なフード&ドラッグ企業がない。そのため、アオキとの提携強化を望んでいたのは間違いない。ツルハやウエルシアで近しい取り組みを行っているが、筆者から見ると「ただ、食品も置いている」だけで手薄な感は否めない。

 これは裏返せば、イオン陣営にはアオキにぶつけるフード&ドラッグがない、ということでもある。

 大手の競争戦略は、競合に似たビジネスモデルをぶつけるのが一つの王道だ。これを、今のイオンには出来そうもない。いかに新ツルハの企業規模が大きくても、従来型のドラッグストアであれば、アオキ(とその他のフード&ドラッグを手掛けるチェーン)は現場ベースでの脅威とは感じないであろう。

 次のポイントが、アオキは損益分岐点が非常に低いこと。次の図表を見てほしい。大手ドラッグストア(表内ではDgsと表記)とフード&ドラッグ系チェーン(同F&D)の損益分岐点構造を筆者が簡易計算したものだ。

大手ドラッグストアと比較し、クスリのアオキは非食品の損益分岐点が低い

 特に見てほしいのは最下段の数字である。各社ともに食品は基本的に“撒き餌”で、収益はほとんどない。そのため、この「1店舗当たり医薬品・化粧品といった薬粧類を含む非食品商材をどれだけ売れば、その商圏で存続できるか」という“薬粧損益分岐”が重要な数値となる。

 図表からはツルハ、ウエルシアの3億円台に対して、アオキやコスモス薬品は2億円を割っても存続できる、という結果が見て取れる。人口減少、高齢化で売上が右肩下がりであることを前提とすれば、大手ドラッグの方がフード&ドラッグより先に、ローカル商圏から退場させられる未来が見えてくる。このデータが示すのは、今の時点なら地方ではアオキやコスモスの方がイオン陣営よりも存続可能性は高い、ということである。