専門医が警鐘をならす「大量のアダルト動画の刺激」
日本のポルノ依存症について注意を促している泌尿器科医がいる。聖隷浜松病院生殖・機能医学科部長の今井伸だ。
今井もまた、日本の若者の間でアダルトコンテンツの見過ぎによる性欲低下やEDが起きていることを指摘する。今井の話である。
「最近は、20歳前後なのにEDで受診に来るケースもあります。朝の勃起やマスターベーションは普通にできていても、性行為になると勃起しないというのです。
かつて若者のEDは経験不足による緊張から生じるものでした。しかし最近はアダルト動画の見過ぎから起きることが多くなっています。
今の子は10代の若いうちから大量のアダルト動画を見て育ってきています。そのため、その刺激に慣れてしまっていて、実際の性行為では物足りなくなることがある。いわば、彼らは毎日豪華な“ご馳走”を食べつづけて満腹になっている状態で、普通の塩おにぎりでは満足できなくなっているのです。AI時代には、ますますそうした風潮が強まる危険性があるでしょう」
今井によれば、平成以降は大きく三つの時代に区分できるそうだ。
第一が平成の初期、つまり2000年くらいまでの時期だ。
当時はポルノ雑誌やレンタルビデオによってポルノを見る時代だった。そのため、未成年の若者は道に落ちているポルノ雑誌を拾って読む、兄や父の所有するアダルトビデオを盗み見るといったことでアダルトコンテンツに接していたが、そのコンテンツ数は限られており、ジャンルの幅も狭かった。
第二が平成の中期から後期にかけての時期だ。
この時代は、インターネットが個人に広まったり、アダルトDVDが個人で購入できるようになったりしたことから、若者が容易にアダルトコンテンツにアクセスできるようになった。特にオンライン視聴が広まった後期は、アダルト動画の大量消費とも呼ぶべき状況になった。アダルトコンテンツで満足する若者が増え、恋愛や性行為から距離を置く「草食系」という言葉が流行した。
第三が、令和の現在だ。
小さな子供まで個人のスマホを持つようになった上、AIの普及によって配信サイトをはじめとしたアダルトコンテンツは、これまで以上にジャンルが細かく分岐し、個人の嗜好に合った形で提供されるようになった。性的嗜好の細分化と個人最適化が加速したのである。これがポルノ依存症のリスクを一段と高めたのは事実だろう。
このような時代の中で、今井が特に懸念しているのがAI時代におけるアダルトアニメだという。
本連載ではあまり触れてこなかったが、アダルトアニメの制作はAIと親和性が高い。AIにキャラクターデザインからストーリー作成まで任せて、それを動画で動くように指示すれば簡単に作品ができ上る。
また、アニメの視聴者の多くは、実写ほど細部の作り込みにこだわらないため、画像の生成技術が多少粗くてもポルノとして受け入れられる。個人制作の同人ポルノ作品にAIを使ったアニメが多いのはそのためだ。



