『体毛があるのが嫌だ』『汗が気持ち悪い』…
今井は言う。
「アダルトアニメにのめり込んでしまうと、リアル世界のパートナーは不要という感覚に陥りがちです。それどころか実在の人との性行為を毛嫌いする人も出てくる。
リアルの世界には、アニメの世界では感じられないものがたくさんありますよね。それゆえ、リアルの相手と関係を持とうとした際、『体毛があるのが嫌だ』『体臭が耐えられない』『汗が気持ち悪い』という感覚になってしまうのです。
アダルトコンテンツでアニメの視聴者が増えれば、そういう歪んだ考えを持つ人が増える危険があります」
話を聞いていて思い浮かんだのは、近年の「恋愛離れ」という言葉だ。若者が恋愛に対して消極的になっているという統計はいくつもある。
日本性教育協会の統計によれば、2005年と2023年を比較すると、若者の「デート」「キス」「性交」の経験率は軒並み低下している。
性行為であれば、大学生(男子)63%→53.7%、大学生(女子)62.2%→43.8%、高校生(男子)26.6%→12%、高校生(女子)30.3%→14.8%と、特に高校生では半減だ。それに反比例するように、現代の若者のマスターベーション経験率は増加しており、高校の男女では共に過去最高値をたたき出している。
背景にはエンターテイメントコンテンツの増加、対人経験の減少などたくさんの要因があるにせよ、アダルトコンテンツが若者の心を支配している影響は決して小さくないだろう。今井もそれを懸念する。
6割の中間層が受ける影響
「僕の分析では、昔からおよそ性欲が強くてリアルな恋愛に積極的な子は2割、反対にそもそも性欲が弱くて、リアルにもポルノにも関心が薄い、またはない子は2割くらいです。残りの6割のマジョリティは、そこそこ性欲はあるが、リアルな恋愛や女性へのアプローチには消極的という中間層だと思います。
僕が危惧するのは、刺激の強いポルノが無制限に見られる環境ができたことで、この6割の子たちがそっちに流されてしまっているのではないかということ。つまり、これまでなら生身の恋愛をしていたはずの人たちが、ポルノの世界に吸い込まれてしまっている可能性があるのです」
子供の遊びも同じだろう。全体の2割がアウトドアタイプの子で、もう2割がインドアタイプの子で、残り6割が中間層だとする。何もない時代は、中間層の子たちは自然と外遊びをしていたが、ゲームやスマホという刺激物が普及したことで、インドア派になっていった。性の世界でも似たような現象が起きているのだ。
今井はつづける。
「セックスって相手があってのことなので、いつも理想の行為ができるとは限らないのです。セックスをしようと思ったら、相手を誘ってその気にさせないといけない。『疲れているけどセックスはしたいので簡単に済ませたい』と思ってもそう易々とはいかない。その相手も、容姿や体臭などが全て自分の理想通りという人は少ないでしょう。それでも、性欲を満たしたいがために、少々のことは我慢してセックスをしているんです。
しかし、自分の性の好み通りのポルノは日常的に簡単に手に入る。さらに、セックスで得られるものと同等あるいはそれ以上の快楽が得られるセルフプレジャー・グッズもある。自分一人で、好きなときに、自分の好み通りの行為で性欲を満たすことができてしまうのです。面倒くさいことはしたくないけど、よりよい相手とセックスはしたい。そういう願いを叶えてくれるのがポルノであり、だからこそポルノに依存してしまうのです」



