『全裸監督』に出演が決まると、実在の黒木香と、自身が演じる黒木香と、双方を研究し、役をつくりあげていった。黒木は脇毛を生やすことに自身の主張を込めていたが、ドラマのなかでは彼女がその理由を話す場面がなかったので、森田から「言葉にする場面をつくりたいです」と提案して、採用されている(『SWITCH』2019年9月号)。
こうして黒木香を演じたことで森田は一気に注目された。彼女は14歳だった2011年に出演した学習塾のCMで俳優としてデビューしたが、それから数えるとじつに8年がかりでのブレイクだった。
小学生の頃に抱いたロケ現場への憧れ
もともと彼女は、小学生時代、神奈川県の実家近くでよくドラマのロケをしていて、撮影現場を見る機会が多かったため、俳優でもスタッフでも何でもいいから、あのなかに入ってみたいと思うようになったという。
小学5年生のときには、友達の発表会を見に行った帰りにスカウトされ、芸能事務所に入る。演技の楽しさに目覚めたのは、事務所で行っていた演技レッスンに参加したときだった。のちに次のように振り返っている。
《実際やってみると演じるのは恥ずかしかったんですが、私って踏み出す時の一歩が大きくて、やるなら全部出しちゃえってタイプで。踏み出してみたら新しい境地が見えて、自分の知らなかった感情を見つけることが楽しくなったんです》(『anan』2024年7月10日号)
仕事がない時期が続き…意識を変えた映画監督の言葉
先述のとおりCMでデビューしたものの、その後はオーディションに落ち続け、まったく仕事のない時期が続いた。オーディションになかなか受からず悩んでいた時期、映画監督の松永大司のワークショップに参加し、「まったくお芝居がうまくできないし、どうしたらいいかわかりません」と相談したところ、監督から「だったら役者やめたらいいんじゃない?」とさらりと言われてしまう。
監督の言葉は当時の森田のなかの核心を突いており、それは芝居がうまくできないということではなく、すべては「覚悟」の問題だと気づいたという。このあとマネージャーに「大学卒業までにお芝居でお仕事がいただけなかったら、役者という仕事自体やめます」と宣言した。内心ではやめるつもりはまったくなかったが、いつまでも覚悟がない状態で続けても役はもらえないと、本当の意味で理解したのだった。
《それからは「悔いなくやり切れたかどうか」を大切にするようになりました。自分に嘘をつかず、「私にできる最大限はできた」と思えるまで頑張れば、結果がどうであっても「やり切った」という気持ちが残るので、納得できるようになりました》と彼女は語っている(『Numero TOKYO』2026年1・2月号)。
『全裸監督』のオーディションに脇毛を描いて臨んだのも、森田からすれば、悔いのないよう自分にできることは最大限やろうと思ったからにすぎなかった。その姿勢は報われ、彼女は大学を卒業した年に配信された同作で、ブレイクを果たしたのである。(つづく)
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