「無理じゃないか」と思っていた三重構造の物語
ミスおじ この物語は、各話で描かれる事件のほかに、2年前に起きた未解決事件と、さらに30年前に起きた事件が並行して進んでいきますよね。書くときの“ややこしさ”はありましたか。
矢樹 大変でした。3つの事件をちょっとずつ動かしていかなきゃいけないので。実は、連載という形式でしたので、一話で読んで満足していただきながら大きな謎も同時に動かしていく、という構成は正直「無理じゃないか」と思っていました。
ミスおじ この三重構造は最初から決まっていたんですか?
矢樹 そうですね。物語の構造だけは最初の時点で決まっていました。できるような気がしてやり始めたんですけど、とんでもなく難しかったです。
ミスおじ どうやってその難所を乗り越えたのでしょうか。
矢樹 私はプロットよりも本文を書きながらキャラクターをつかんでいくタイプなので、プロットの段階では大きな謎に絡む重要人物についてなかなかつかめていませんでした。ですが、連載の二、三話のあたりで、ある重要人物が「こういう人物なんだ」と自分の中でつかめて。そこで物語全体に芯が通るような感覚を得て、長編としての道筋ができた、という感じです。それまではふわふわした感じで書いていたのが、着地点が見えた、という。
ミスおじ では、プロットはしっかり作られるほうですか。
矢樹 わりと長めにしっかりプロットは作るんですけど、書いてると絶対そのとおりにならないです。刑事総務課も、ラストまでのプロットは作っていたんですけど、書いている途中であまりに違ってきたので、途中でもう1回作り直して。でも、そこからもまた違っていって、という感じでした。
ミスおじ 話が転がっていくんですね。
矢樹 そうですね。登場人物を書いていく中で、「この人だったらもっとこうなるな」とか。プロット段階ではコマのような感じで置いてしまっていることも多くて。そこから書いていく中で人物が見えてくるんです。プロットと違う話になっていくときが、書いていてすごい大変ではあるんですけど、一番楽しくて苦しい、という感じです。
おとん そうやってご苦労されて生まれた作品なんですね。刑事ドラマがお好きな方にも、ミステリーファンの方にも、広く楽しんでいただける作品だと思います。本日は貴重なお話をありがとうございました。
