砂漠でギャングに銃を突き付けられ……
渡部 当時はバグダッドが陥落して、サダム・フセイン元大統領が逃亡していた時期。我々は捜索取材を兼ねて、フセインの故郷であるティクリートを取材している最中でした。
そこで取材を終え、バグダッドに戻る最中の砂漠で、突然シボレーが我々の車に横付けしてきたんです。直後に窓を下ろして、ギャングみたいな男がこちらに自動小銃を向けている。この瞬間、流石に「終わった」と思いました。
その時、ティクリートなどスンニ派の多い地域では、旧政権側の人間や反米武装勢力が活動して、米軍や外国人を狙う襲撃が相次いでいました。僕自身はアジア人だと一目で分からないよう、シュマーグ(アラブ圏で使われる頭布)で顔を隠して、現地人に変装していたのですが、それでも相手に怪しまれた。直前にも同じルートで、日本人外交官が2人殺害されており、このまま撃たれるのだと覚悟しました。
――想像もつかないほど、緊迫した状況ですね……。
渡部 ただ、そこで同行していたガイドが、機転を効かせてくれたんです。
――ガイドさんはどんな行動を?
渡部 私たちがティクリート出身で、フセイン元大統領を支持するスンニ派側の人間といった趣旨を伝え続けてくれたんです。そのおかげで、撃たれずに済みました。このように同じチームに、スンニ派やシーア派の方などを配置して、局面によって交渉役を切り替えたりするんです。
結果的に、フセインが発見された時に一報を出すことができましたが、その過程でかなり危険な橋を渡っていました。当時は僕も30歳ぐらいで、野心があったのでリスクを取りましたが、いま思えば到底できないなと思うやり方でした。
――フセイン発見のニュースを、渡部さんが伝えた映像は有名ですが、そんな裏話があったんですね……。
渡部 翌2004年にも、イラクで取材中に突然後ろから首を絞められ、テロリストの車に押し込まれたことがありました。この時も、ガイド兼ボディーガードとして働いてもらっていたメンバーに助けられました。彼はフセイン政権下で、特殊部隊の元兵士だったので、戦場での立ち回りを熟知していました。
それからイラク戦争の時は、BBCやCNNをはじめメディアが殺到していたのですが、情報交換していると「検問を越えられなかった」という声が多かった。聞けば、検問で声をかけてきた人がスンニ派だったものの、チームにはシーア派の人しかいなかったので追い返されたそうです。
あの時のバグダッドでは、スンニ派やシーア派の勢力が入り乱れて、情勢が目まぐるしく変わっていった。あくまでも僕の経験則ですが、イラクを構成する民族や宗派の比率を、そのままチーム編成に反映する必要があったんです。



