「絶対に離婚する」と周囲から言われていた
――ブレイクとほぼ同時期に、結婚や長男の誕生という出来事も。戦場カメラマンというと、長期的に海外に滞在して渡航中のリスクも高い仕事です。そのあたり、葛藤はありましたか。
渡部 テレビに出るようになった時期は、子どもができて海外に行きづらいタイミングでもありました。その頃はカメラマンとしても、プライベートでも、そしてメディアに露出するという意味でも、大きな転換期でしたね。
紛争地に行くと、世界各国の戦場カメラマンと会うのですが、その多くが独身か離婚歴があるんです。なかにはバツ4、バツ5の方もいて、僕が結婚すると話すと「絶対離婚するだろう」と散々忠告されました。
それでも結婚生活が続いているのは、妻が幼少期に情勢が不安定な国に滞在していたことも関係していると思います。紛争地とはまた違いますが、妻は海外で暮らすことに理解がありましたし、妻のお父さんもイラクに滞在していたので、話も弾んだんです。危機管理をして戦地に入っていることや、これまで大きな怪我なく帰国してきたことも伝え、無事に結婚を許してもらいました。
戦場では結婚する人が増える
――戦場にいると、結婚や家族に対する考え方にも変化が起きそうです。
渡部 戦争地帯など情勢が不安定な地域では、結婚する割合が増えると言われています。最近のウクライナでも目の当たりにしましたが、情勢が不安定でいつ命を落とすか分からない状況では、寄り添う相手を求める気持ちが高まるそうです。そうした極限の中で、人々が結婚していく姿は素敵だと感じましたね。
それに諸外国では、恋愛だけでなく、家族での決まり事や、経済的な事情、宗教上の関係で婚約する場合もあります。暮らし方を選べるというのは平和の到達点なんですよね。世界各国の暮らしを目の当たりにすると、誰かと生活を共にすることが究極の幸せなのではないかと、無意識に想いが強くなっていったのかもしれません。ただこれは私個人の話で、もちろん結婚や出産をしない、という選択も尊重されるべきです。
――家族が出来てから、仕事のスタイルは変わりましたか?
渡部 それこそ20代から30代前半までは、数ヶ月から半年単位で、海外に滞在していたんです。体力も気力もありましたし、現地にいた方が情報や現場の空気もキャッチしやすいですから。
結婚してからは、家族との時間や講演会の仕事を両立しながら、1週間から10日前後で渡航するスタイルになりました。キャリアを重ねるごとに、言語や国境の越え方、撮れ高の塩梅、ガイドとのネットワークなどのノウハウも蓄積されていく。これまでの経験を活かして、アタリをつけて短期決戦にシフトしていく。これが家族が出来てからの最大の変化ですね。




