最新の戦争は「兵士がいない」

――短期決戦だと、より現地との距離感を保つのも大変そうです。

渡部 日本にいる時間が長くなると、仕事のモチベーションをどう維持していくかが難しいですね。

 やはり現場から離れてしまうと、情勢も刻一刻と変わってしまうので、部外者のように感じて腰が重くなってしまいます。もちろん50代になれば体力も落ちていくうえ、家庭や生活を支えていく必要もあるので、フリーランスは自分に鞭を打っていかないといけない。ワークライフバランスではないですが、仕事と生活のバランスを維持していくのが大変で、正直よくここまでやってこれたなと(笑)。

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――特に、昨今は世界情勢も目まぐるしく変化しています。

渡部 もう今の戦争は、完全に情報戦になっています。とても極端に言ってしまえば、戦場に兵士がいない状態と言っても過言ではない。

 弾道ミサイルなど、遠隔で自動化された兵器が使われ、AIも軍事利用されるようになった。ダミーの情報も流して戦局が錯綜していき、戦争の形が見えにくくなっています。本当なのか嘘なのかよく分からない状況下で、多くの方が犠牲になり、そして莫大な利益を得ている人たちがいる。

 こうして戦争の形が変わっていく中で、戦場カメラマンとして、やはりアナログな視点は大切にしていかないといけないなと。若い頃のように何ヶ月も戦地に張り付くことはできないですが、今の生活を維持しながらも、現場に出向いていかなければと痛感しますね。

昔と変わらず、今も現地に足を運び続ける(写真提供=本人)

年を重ね、生と死がよりリアルなものに

――戦場カメラマンとして活動を始めてから30年以上が経ち、ご自身も父親になることで、自然と仕事や生活のスタイルも変わっていきますね。

渡部 30代後半で結婚、子どもが出来て、それ以降メディアの仕事も受けるようになり、より物事を柔らかく受け止められるようになったと感じます。

 ちょうど(このインタビューの)前日も、家族でキャンプに行っていました。海辺でテントを張って、火起こしをして、自炊して。テントを張るまでに何時間も段取りがあるんですけど、それが完成してぼーっと過ごしていると、気持ちが整ってくるんです。

 僕も幼少期は、父と駿河湾で釣りばかりしていました。海辺で何時間も釣り糸を垂らしていた頃を思い出すと、いま子どもと過ごしている瞬間と重なるんです。昨年、父が他界したこともあり、最近は「父が僕くらいの年齢だった時どんな気持ちで釣りをしていたのか」と考えることがあります。

 父から自分へ、そして子どもへと世代がつながっていくことを意識すると、これまで戦地で目の当たりにしてきた人の生や死も、以前より自分自身の人生と地続きのものとして感じるようになりました。独身だった30代前半までは、とにかく現場へ行くことしか考えていなかったですが、54歳になった今はスタンスも徐々に変わって、より円熟しているような感覚があります。

最初から記事を読む 「目の前で人が殺され、失禁してしまった」「自分は死ぬのかも、と…」戦場カメラマン・渡部陽一(54)が乗り越えてきた、いくつもの“死線”

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