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桐野夏生氏「『今でもサイン会はやりたくないんです』と」
デビューから10年ほどは文学賞に恵まれなかった。同じく直木賞作家の桐野夏生氏が語る。
「今でこそ誰もが知る人気作家ですが、しばらくはあまり売れなかったそうです。ご自分でも、『初めてのサイン会はお客さんが誰も来ませんでした。だから、今でもサイン会はやりたくないんです』とおっしゃっていました」
「ガリレオ」シリーズ第三作『容疑者Ⅹの献身』(文藝春秋)で直木賞受賞
ターニングポイントとなったのは、98年に刊行された『秘密』(文藝春秋)だ。同作で日本推理作家協会賞を受賞すると、その後、ベストセラーを連発する。06年、天才物理学者・湯川学を主人公とする「ガリレオ」シリーズの第三作『容疑者Ⅹの献身』(文藝春秋)で直木賞を受賞。福山雅治主演で映像化されると、海外にも読者層を広げた。
前出の馳氏は、東野作品の中でも、『白夜行』(集英社)を絶賛する。殺人事件を巡る秘密を抱えた男女の半生を描く、いわゆる「ノワール作品」である。
「当時は僕のノワール作品の方が売れていましたから、『俺でも書ける』という対抗心があったんじゃないかな。2人の主人公の内面を一切描写せず、他者の視点を通じてそれが描かれる。結果、読み進めるうちに殺人事件を巡る2人の哀切が伝わってくる。東野さんの力量に嫉妬するほどの名作です」
