2020年に84歳で逝去した野村克也氏。生前の野村氏は大谷翔平の二刀流をどのように見ていたのか。本稿は、その才能と二刀流の可能性を独自の野球観で語った2018年の貴重な証言である。名将が残した言葉は、今なお色褪せることなく深い示唆を与えてくれる。宝島社の新刊『証言 大谷翔平 世界の頂点に立つシン・天才二刀流の素顔』より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目)

生前の野村克也が語った「大谷翔平の弱点」とは―― ©文藝春秋

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「プロ野球を舐めるな」

 日本ハムファイターズ入団当初、大谷翔平の二刀流挑戦に対して「プロ野球を舐めるな」と厳しいコメントを発していたのが野村克也である。独自の野球理論により、選手としても監督としても多大なる実績を残してきた野村の目に、今の大谷の投打にわたる活躍はいったいどのように映っているのだろうか。

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「俺が大谷のプレーを見るのは生中継ではなくニュース映像がほとんど。だからどうしても打ったり抑えたりしているところばかりになるんだけど、それでもまあ大したもんだと思うよ。彼に対して最初に『プロ野球を舐めるな』と言ったのは、キャッチャー出身の人間の性なんだよ。俺は前評判の高い優秀な新人が出てきた時に、打者であれば『どうやって抑えてやろう』、投手ならば『どうやって打ってやろう』と考える。一流の成績を残すというのは大変なことで、つまり『簡単に活躍されてたまるか』というキャッチャーの本能からそういうことを言ったわけだ。

 でも、大谷は実際に投げるほうも、打つほうも、日本でも、メジャーでも通用しているんだから、もうそんなことは言えないな。あれだけ活躍すれば認めざるを得ないよ。

 直接の付き合いはないから、進化や進歩の度合いというような細かなところまではわからないけど、メジャーで2本目のホームランを打ったのを見たかぎりで言えば、軸足のタメが利いたいいバッティングをしていたよ。我々の世界では『タメができればお金が貯まる』と言って、それが一流バッターの証でもある」

 日本ハム時代の成績から早々に「舐めるな」発言の“撤回”を公言していた野村だが、さらなるメジャーでの活躍には感服しきりの様子である。だが過去に捕手として対戦してきた名だたるスラッガーたちと比較した時に、打者・大谷の現状にはいくらか物足りなさを感じる部分もあるという。