11月2日公開のアメコミ超大作『ヴェノム』は、マーヴェルの中でも類を見ないエポックメイキングな野心作だ。「週刊文春」初のシネマ特別号 ダークヒーロー特集(完全保存版文春ムック)でヴェノム特集を執筆した作家・岸川真が伝える、『ヴェノム』の魅力とは? 

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丸坊主かつ全裸上等!のギャングスター

 アメコミ界においてスパイダーマンよりも数段パワフルで、自分を阻むやつは殴る、蹴る、喰う! ワルなやつ。そんなストロング・スタイルなスーパーヴィラン(悪役)がヴェノムだ。ついに、こいつがスクリーンにやってくる!

『ヴェノム』11月2日(金)全国ロードショー

 スパイダーマンの素顔は家族思いの高校生ピーター・パーカー君だが、ヴェノムは違う。ヴェノムに変身するエディ・ブロックは人気ジャーナリストだったのにフェイクニュースを暴かれて転落人生を歩む負け犬だ。パーカー君がまさに衣装を着替えるのに対し、ヴェノムは地球外生命体シンビオートがエディの体内と同化。いざというときに肉体そのものがベロっと入れ替わる。

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 スタイルも赤と青のアメリカンな蜘蛛人間と対照的な黒主体で見ようによっては丸坊主かつ全裸上等!のギャングスターなのだ。

善玉スパイダーマンとは違うポップな暴力番長

 国旗色を身にまとうストレートでスクウェアな善玉スパイダーマンに対し、80年代のストリートカルチャーの申し子のようなブラックな姿はLL・クール・JやRun-D.M.Cといったヒップホップスターを想起させた。ワルの力でワルを制す、その不良感度の高さはバットマンに対するジョーカーと違うポップな味わいを持っているといえる。

 ファンの期待値も高いコロンビア映画&マーヴェル・エンタによる『ヴェノム』は、今述べたコミックのルーツにある80年代ポップカルチャーを巧みに取り入れて、2010年代映画の最新型に仕上がっている。