かつては「漁船のパレード」も
――海に囲まれて、島の中で暮らしが回っていく。しかも、みんなどこかで血がつながっていて。そんな島だからこその、風習や行事もありそうです。
築島 小さな島なんですけど、神社が2つあるんですよ。海の神様と山の神様を祀っていて、それぞれ年に1度、島でお祭りをしていました。
特に大きいのが、毎年正月明けに行われる海の神様のお祭り「恵比須祭り」です。島ではこれのために、1カ月前の12月から仕込みが始まるんですよ。
――どんな仕込みをするのでしょうか。
築島 漁師の安全や大漁を願って、ビロウの葉で作った伊勢海老を奉納するんです。それをつくるのは、島の小学生たちの仕事。島中に自生しているビロウの葉っぱをたくさん集めて、伊勢海老の形をした飾りを作って、絵馬にくっつける。それを12月中に何十個も作っておくんです。
お祭りの日が近づいたら、小学生が法被を着てお神輿を担いで、島中の家を一軒一軒まわって、この絵馬を島の人たちに配ります。「絵馬の裏に願い事を書いて、お祭りの日に持ってきてくださいね」と言って。
お祭り当日は、書いてもらった絵馬を神社に持ってきてもらって、神官に奉納してもらう。そのあとは、港にみんなで行って「漁船パレード」をやるんです。
――どんなパレードなのでしょう。
築島 島中の船が大漁旗を掲げて、バーッと港を回るんです。僕が小学生だった頃は、人はもちろん、船もいまよりたくさんあったから、圧巻の光景だったんですよ。
そして港に戻ってきたら、今度は「築島太鼓」です。これも、祭りのために小学生のうちから仕込まれる伝統芸能で。小学生と青年部の大人たちが披露して、それが終わると、みんなで島の集会場に移動して、宴会です。伊勢海老漁が盛んだったころは、伊勢海老のお造りが無料で振る舞われていました。
――そのお祭りは、いまも続いているのでしょうか?
築島 いや。最後にやったのは、僕が小学校ぐらいの時だったんじゃないかと思います。祭りには子どもの存在が欠かせないから、その担い手がいなくなって、自然と続けられなくなってしまったんです。
生まれたばかりの赤ちゃんを道に“置いていく”独特の風習
――島にとって子どもは、それだけ特別な存在だったんですね。育て方にも、島ならではのものがあったのでは。
築島 はい。たとえば、「もらい子」という風習があります。生まれたばかりの子を外に置いて、最初に見つけた大人が第2の親になるというのが、築島のもらい子の風習です。だから僕にも、実の親以外に第2の親がいるんですよ。

