AIが最善手と示そうが、「金を渡した上に相手玉は詰めろにならない」「王手で敵の角の利きを消し、自玉の安全を確保して寄せる」という、精密な読みを必要とする手順を、2日制の極限状態かつ一分将棋で決断できる棋士がどれほどいるだろうか。そもそも伊藤でなければ、その前に崩れていてもおかしくなかったはずだ。両者とも疲労困憊だろうに、笑顔を見せつつ、感想戦は40分以上行われた。最後は口頭での、2人にしか理解できないやり取りだった。

7連覇を果たし、異次元の強さを見せつけた

 記者会見直前に見かけた藤井は、まさに疲労困憊の様子だった。第1局で敗れたとき以上に疲れた表情を見せていた。無理もない。2日間をかけたフルマラソンの末、二転三転のトラック勝負を制し、終局直後からインタビュー、大盤解説会での挨拶、濃密な感想戦、そして記者会見へと続く。第一人者の責任とはいえ、過酷なスケジュールだ。会見でも「終盤戦になっても先が見通せない将棋が多く、実感が湧かない」と、激闘のリアルな心情を吐露していた。

終局後の藤井聡太王位 ©勝又清和

 封じ手で見せた異筋の銀打ち、角引きの辛抱、逆転の桂跳ね、そして王手馬取りに対する玉上がり――藤井にしか指せない手が詰まった名局だった。いや、第1局もそうだし、第5局の藤井の攻めは升田幸三賞ものだった。6局すべてが素晴らしかった。

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 これで2日制タイトル戦は21シリーズ戦っていまだ無敗。第7局までもつれ込んだのは今年の王将戦、永瀬拓矢九段との番勝負1回しかない。四段昇段からこの秋でちょうど10年。一局一局には難しさがあったとしても、結果として残るこの戦績は、あまりにも次元が違う。

 彼はいったい、どこまで高みへ登り詰めるのだろうか。

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最初から記事を読む 「読みが噛み合っているんですか!?」藤井聡太と伊藤匠による王位戦第6局“予想外の応酬”は、控室のプロ棋士にも衝撃だった

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