藤井聡太王位に伊藤匠二冠が挑戦する、伊藤園お~いお茶杯第67期王位戦七番勝負は、将棋界注目の対決となった。

 7月4・5日、静岡県浜松市「浜松八幡宮楠倶楽部」にて行われた第1局では、先手の藤井が角換わりに誘導し、伊藤は右玉を採用。終盤、自玉の危険をものともせず攻め立てた伊藤が快勝し、伊藤は2日制タイトル戦での初勝利を挙げた。しかし、その後は一進一退の勝負が続き、第4局(長崎県長崎市「ガーデンテラス長崎ホテル&リゾート」)で2勝2敗のタイに。

 そして第5局(徳島県徳島市「渭水苑」)は、またも伊藤の右玉に。両者の深い研究を窺わせる序盤から、藤井が自玉頭から攻め込む「これぞ令和の将棋」という構想を見せて圧勝した。

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9月8・9日、神奈川県秦野市「元湯陣屋」にて行われた伊藤園お~いお茶杯第67期王位戦七番勝負第6局(写真提供:日本将棋連盟)

 3勝2敗とタイトル防衛に藤井がリーチをかけた状態で、9月8・9日、第6局が神奈川県秦野市「元湯陣屋」で行われた。

 伊藤は前週の9月2日にも陣屋で、広瀬章人九段を挑戦者に迎えた第74期王座戦五番勝負第1局を戦っている。そのときは王者として上座に座ったが、本局では挑戦者として下座に着いた。

伊藤が選んだ「早繰り銀」

 先手の伊藤が選んだのは、エースの相掛かりではなく角換わり、しかも銀を4六へ繰り出す「早繰り銀」だった。伊藤の角換わりといえば腰掛け銀がほとんどで、早繰り銀の採用は過去に1局しかない。伊藤は、王位戦第4局で藤井が見せた対策を王座戦第1局で広瀬にぶつけ、王位戦挑戦者決定戦で戦った羽生善治九段の早繰り銀を藤井にぶつけた。

 AI研究だけでなく、実戦を通じ自身の頭で考え抜いた読みこそを財産として、それを有効活用しているのだ。意表の戦型選択だったが、藤井も動じることなく早繰り銀で追随する。開始から40分過ぎには戦いが始まり、その後も淀みなく進んだ。

 藤井は44手目に82分もの大長考をする。前例はないものの、端歩の形を少し変える類型が1局だけあった。実戦でも類型のように筋違い角を打てば、伊藤が対応を少し変えた。伊藤が左の銀も前進させ、さらに支えの歩を打ったところで藤井が21分考え、封じ手を行って1日目が終了した。

1日目では藤井聡太王位が60手目を封じた(写真提供:日本将棋連盟)

 私はABEMA将棋チャンネルで観戦していたが、AIが妙なところに銀を打つ手を最善手と示しており驚いた。人間の直感では極めて指しにくい手だからだ。