SNS時代ならではの「自然発生的な」連帯デモ
eri はい。SNSが大きな分断を生んだり、対立をつくったりしているのを見ると、否定的な気持ちになりがちですが、同時に可能性も感じています。
例えば、有志の方が「デモカレンダー」というウェブサイトを立ち上げてくださって、日本各地のどこで誰がいつデモをやるかが検索できて、サイト上の日本地図でデモがある場所が光って見えるんですよ。私たちがデモの告知をすると、そのタイトルに寄せたりして各地で連帯デモが起きます。私たちが主導したわけではないのに、多いときで47都道府県すべてで220カ所以上同時に人々が立ち上がったこともありました。
実際、他の団体とは全くコンタクトを取っていないんです。でも誰かの活動が可視化されることで、私もやってみようという人が自発的に増えるのは、SNSがなかったら絶対に生まれなかった新しいつながりです。SNSは私たちが得た、大きな「ギフト」ではないかとも感じています。
ブレイディ それはすごいですね! 誰がリーダーかを決めず、自然発生的に集まったメンバーがおのおので役割を果たすのは、すごくレッドストッキング的だなと感じます。彼女たちは、中央集権的なトップダウンの組織構造を、家父長制と同じだと考えて嫌うんです。
この発想は、大正時代のアナキスト・伊藤野枝のいう「ミシンの理論」にも通じています。ミシンは中央の司令部がないのに、隣の部位から隣へと各動きを伝えていって連動し、全体として協同してひとつの縫い物ができあがっている。だったら中央政府なんていらないんじゃないか、というのが彼女の思想でした。
eri そのミシンの喩え、私もすごく好きです。その意味でいうと、ミシンの一つひとつの部品が重要であるとも捉えています。私たちは一応デモを主催する側ですが、デモをつくっているわけではない。参加してくださる方々と一緒につくっているもので、参加者のペンライトの光の波をみると、一人ひとりが仕事や家庭の悩みを抱える中で、ここに来る決断をしていることがものすごく尊いことに感じられます。
ブレイディ eriさんたちのデモには、今まで全然参加したことのなかった人たちも多いそうですね。今の日本の状況を受けて、政治的にならざるを得ない理由を、それぞれが抱えているんだと思います。イギリスの場合、若い男性たちがマノスフィア的な思想で保守化していることへの危機感から参加している女性も多いのですが、日本の女性たちは何に一番、危機感を感じているんでしょうか。
eri この前の選挙のとき、「ママ戦争止めてくるわ」という言葉が流行りましたが、このまま軍拡が進んで戦争をする国になってしまうことへの危機感を持っている人は多いと思います。
ただ、それぞれがこのままでは危ないと感じていても、日本人は何か一つの言葉で集まるのがあまり得意じゃないとずっと思っていました。でも先日、日本と韓国のデモを研究されているキム・キョンファさんのお話を伺う機会があって、「みんな韓国のデモはすごいって言うけど、日本もすごいんだよ」と言われたんです。「平和」や「戦争反対」で人が集まれる国って、実は珍しいことなんだと。
平和が揺らいでいることに危機感を抱いてデモに集う人たちがいるという事実に、改めて自覚的になれました。
ブレイディ 確かに平和を掲げるデモが大きく盛り上がるのは日本独特かもしれませんね。欧州で多い、労働運動のようなデモではないですから。
(後編につづく)
