高齢者の大敵である「転倒・骨折」。しかし、いつ、どこで、どう転んでいるのか、実は研究者すらよく知らなかったという。転倒予防研究の第一人者である山田実教授に、最新の知見と今日からできる対策を聞いた。
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60年も転倒率が変わらない
まず、転倒と言っても、ひと括りにできません。転ぶきっかけは主に三つ。滑る、つまずく、バランスを崩す、です。そして、三つの転び方で、それぞれ原因が違うのです。
たとえば、つまずく時、前と後ろのどちらの足が引っかかると思いますか。多くの方は、前に出している足のつま先が引っかかる、と答えます。だから「つま先を上げて歩きましょう」と指導する人も多い。しかしながら、実際につまずくのは、ほとんどの場合、後ろにある足を前に振り出すときです。一方滑る時は、前に足を踏み込んだ時です。
もう一つ、面白いデータがあります。なんとなく、「歩くのが速い人は転ばない」と思っていませんか。過去1年間に転んだ人/転んでいない人で、歩く速さを比べると、ほとんど差がありません。少なくとも比較的元気な高齢者では、歩く速さと転倒は関係ありません。
ところが、「滑る/つまずく/バランスを崩す」でグループ分けしてみると、歩く速さの順番にきれいに並ぶのです。滑って転んだ人の歩速が最も速く、バランスを崩して転んだ人の歩速が最も遅いのです。
理由は歩幅です。高齢者の歩く速さは、ほとんど歩幅で決まります。歩幅が広いと、前足のかかとが勢いよく着地するので、前に滑る力が働きやすい。だから元気に大股で歩く人ほど滑りやすい。雪の日に「ペンギン歩きをしましょう」と言われるのは、歩幅を狭めて滑る力を小さくするためです。
逆に歩幅が狭くなってくると、滑りにくくなる代わりに、後ろの足が上がりにくくなって、つまずきやすくなる。筋力が落ちて、歩幅がさらに狭くなるような方は、バランスを崩しやすくなります。
転ぶ場所も、きっかけごとに違います。家の中で最も転倒が多いのは居間ですが、居間で多いのは、つまずきとバランスを崩す転倒です。台所は床が濡れていることが多いので、滑る転倒が増えます。
もちろん、風呂場やトイレも危ない場所です。ただ、狭いので、転びそうになっても、とっさに壁などに手をつける。ところが、居間は広いので手をつくところがない。
