脊柱管狭窄症を患ったノンフィクション作家の山根一眞さんは、ある日突然、脚から“ガクン”と力が脱けて歩行が困難になった。治療のために手術が必要とわかり、病院を探した山根さんが辿り着いたのは、保険診療で脊柱管狭窄症の手術を受けられる病院だった。

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(脊柱管狭窄症による脚の脱力を初めて経験してから)20日後の8月3日、東京都内の地下鉄駅構内で再び同じ「脚ガクン」で通路脇にしゃがみ込んでしまった。5分ほど休み、這うように改札口へと向かったのは、強い尿意を覚えたからだ。脊柱管狭窄症では「脱力とともに強い尿意を覚えることがある」と読んでいたが、この時がそれだった。脊柱管の圧迫部分の神経が膀胱や直腸に通じていれば、オシッコやウンチで異常が出る理屈だ。改札口正面のトイレまでよくたどりつけたと思うが、小用中も立っているのが辛く、倒れそうで情けなかった(異常勃起をきたすこともあるというが私は経験していない)。

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 この外出歩行中の「脚ガクン」は3回も経験した。もはや手術を受けるしかないのか――。

MRI(核磁気共鳴画像法)による筆者の手術前の診断画像。この画像では真ん中に通っている腰椎部分の脊柱管が3か所で細く締めつけられていることがわかる(筆者提供)

ありがたい助言

 この自問に対して助言をしてくれたのが、年縞博物館がある福井県若狭町、三方診療所の所長、岩田竹矢先生だった。岩田先生は高齢者の健康維持には「畑仕事の運動療法と採れた有機野菜の食事療法の二本柱が大事」と、独自開発の有機肥料を無料配布するなど地域に根ざした健康づくりを続けている。私が尊敬する医師で、年縞博物館の熱い応援者でもある。そのご縁で、私の腰の悩みについて口にしたのだが、何とも詳細な助言をいただいた。

「腰痛の原因が脊柱管狭窄症とすれば、長年の負荷で脊髄周辺の黄色靭帯が厚く硬くなり神経を圧迫するのは加齢現象として仕方のない面もあります。基本的には圧迫を物理的に解除しない限り、痛みや痺れはとれません。しかし手術対象になるのは、『痛みが強くて耐えられない』『運動神経の圧迫で脱力が出てきた』『排尿障害が起きる』という一部の方です。圧迫が長く続くと神経の再生が悪く、せっかく手術して圧迫解除したのに痛み、痺れが変わらず……という話も聞きますし」

 岩田先生の助言の「手術対象となる条件」はすべて私に当てはまる。

 一刻も早く手術を受けなくてはと焦ったが、さて、どの病院を選べばいいのか。背中を大きく切開し脊椎にボルトを入れて固定する手術も広く行われている一方、切開がごく小さく体へのダメージが小さい内視鏡手術もある。だが、症状や脊椎の状態もよくわかっていない患者が手術方法を選び病院を選択するのは難しい。