家が水に浮き、水が引いたら元の位置に着地。どういう仕組みなのか?
この時、家を支えるのは周囲に埋め込まれた頑丈な鉄製ポールだ。4本のポールと家をバネ入りの係留装置でつなぐことで、浮いた家が水に揺られてもどこかに流れていくことはないという。水が引くと、ほぼ元の位置に着地する。誤差は3センチ以内にとどまるそうだ。
なお排水管は地面と切り離されるため、トイレや水道は利用できなくなる。とはいえ、水が去って家が接地した後は容易に復旧できるような設計にしているという。
最大約1メートルまでは被害なしで耐えるスタンダードタイプに対して、浮上タイプは最大5メートルでも室内に水が入らない。ただし、ハザードマップで5メートル以上の浸水が予想される地域では、安全を考慮してスタンダードタイプのみを提供している。
どう対策しても、家が浮いてしまった
一条工務店が耐水害住宅の開発を始めたのは、2015年のこと。同年9月に起きた関東・東北豪雨で多くの顧客が浸水被害に遭い、家の復旧作業や多額の修理費用で苦しむ姿を目の当たりにしたのがきっかけだ。
「被害に遭った住宅は床下・床上に泥があふれ、ひどい状態でした。そのうえ修理費用は500万~1000万円にものぼり……。『お客さまにこんな思いをさせてはいけない』と、すぐに耐水害住宅の開発に着手しました。
約3年かけて1メートルの浸水に耐えられる住宅が完成したのですが、いざ販売しようと思った矢先に想定を超える台風が起きたんです」
それが、2019年10月の台風19号だ。北・東日本での記録的な大雨により住宅浸水は約7万棟、浸水の規模は1メートルをゆうに超えていた。「今の耐水害住宅では、このレベルに耐えられない」として、さらなる開発を迫られたという。
「一般的な35坪・約80トンの重さの住宅の場合、1メートルちょっとの浸水であれば耐えられます。しかし、浸水が1.5メートルになると浮力が勝って家が浮いてしまう。5トンの重りを乗せたり、地面にアンカーを打ったりと実験を重ねたものの、浮力にはどうしても勝てませんでした」
最終的に、「どうやっても浮いてしまうなら、浮かせてしまおう」と逆転の発想にたどり着いた。安全に浮かせて、安全に着地させる。そう方向転換し、1時間に最大300ミリの豪雨を再現できる大型降雨実験施設での50以上にわたる実験を行った。

