『DIGGER/ディガー』
トム・クルーズの主演最新作だ。これは、事前の情報を全く入れずに観ることをオススメしたい。そのため、本稿でも内容にできるだけ触れずに紹介してみる。
トム・クルーズといえば、多くの観客を呼べる一枚看板のトップスターに約40年も君臨し続けるという前人未到の偉業を成し遂げているだけでなく、危険をかえりみないスタントに自ら挑む命知らずとしても名を馳せている。ただ、そうした映画史に名を遺すレベルの業績を重ねながらも、まだ足りないものがある。
それは、「役者」としての評価だ。トム・クルーズに対する称賛はあくまで「スター」としてであり、「表現者」としてではない。それでも良さそうにも思えるが、当人はそうは行かないのだろう。実際、既に1989年の『7月4日に生まれて』では明らかに賞狙いに出ており、しかもアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた上にゴールデングローブ賞も受賞している。
そして、功成り名を遂げた今、その野心を再びむき出しにしてきた。『レヴェナント 蘇えりし者』でレオナルド・ディカプリオに念願のアカデミー賞を受賞させたアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督と組んだのも、その表れといえる。そして、本作を観終えた多くの方が「トム・クルーズ、アカデミー賞を狙ってきたな」と思うだろうと想像できるほど、「演技者」としての自身を前面に出しまくっている。
その様からは、「トム・クルーズ、ここまでやるのか」と「トム・クルーズ、ここまでやれるのか」という二段階の驚きを受け止めることができた。そのあまりの大熱演ぶりは、「そこまでやらんでも――」と辟易する方もいるかもしれない。だが、そう思わせること自体が、トム・クルーズとイニャリトゥの仕組んだ巧妙な罠。そこに対するエクスキューズも見事に用意されている。
この役は、一つ間違うと嘲笑されかねない危険な賭けでもある。だが、トップを極めた者があえてそれに挑み、そして見事にやり切ってみせたのだ。なんとアッパレなことだろうか。
『DIGGER/ディガー』
監督:アレハンドロ・G・イニャリトゥ/出演:トム・クルーズ、リズ・アーメッド、ジョン・グッドマン、ザンドラ・ヒュラー、ジェシー・プレモンス、マイケル・スタールバーグ/2026年/アメリカ/129分/© 2026 WBEI and Legendary/配給:東和ピクチャーズ・東宝/10月9日よりロードショー
