『ハードボイルド』
最後も、長いこと第一線を張り続ける男の主演作だ。
リーアム・ニーソン。『シンドラーのリスト』も今は昔。いつの間にかB級アクションの帝王のような位置に収まっている。ただ、近年は一時期のタフガイ一辺倒の役柄は減って、年相応に老いを意識した役柄を演じながら枯れた哀愁を漂わせる佳作も増えており、往年の「性格俳優」としての横顔も蘇ってきた感がある。
本作も、そんな一本だ。リーアム・ニーソンが演じるのは、裏社会のベテラン運び屋。だが、加齢もあって記憶を失っていく病を患ってしまう。本作には、アクション描写はほとんどない。リーアム・ニーソンのタフな活躍も終盤までない。描かれるのは、残り少なくなった記憶ある日々を、一人のアウトローがどう生きていくかという問いかけ。
彼は、かつて捨てた家族への贖罪に残りの人生を向けようとする。だが、成長した娘は振り向いてくれない。そうした中で、ある事件に巻き込まれてしまう――。
邦題の通り、作品世界はまさにハードボイルドだ。作品に流れる空気はどこまでも乾いており、硬質だ。リーアム・ニーソン主演だから「アクション映画」として売られている感はあるが、実際のところは、老いたアウトローの日常を淡々と綴った人間ドラマ。終盤の闘いに至る頃には、静かな感動が生まれている。
展開も演出も徹底的に抑制されており、派手さは全くない。そのため、タフなアクション映画を期待すると肩透かしを食らうだろう。BGMもほとんど流れない静謐。背後に映る空は、朝焼け、薄暮、曇天……といつも淡くて暗い鉛色。そんな、まさに「ハードボイルド」な世界に、人生の年輪を刻んだリーアム・ニーソンの寡黙な顔がよく映えていた。
近年のリーアム・ニーソン主演作は、こうした人生の哀感を醸し出している、渋みの強い作品も少なくない。ただ、ポスターなどの宣伝ビジュアルは「アクション」を強調してばかり。そのため、せっかくの魅力が伝わらず、敬遠されるお客さんもいるのではなかろうか。それは、あまりに惜しい。作品志向の方にこそ、今のリーアム・ニーソンを追ってみていただきたい。当たり外れはあるのだが。
『ハードボイルド』
監督:ハンス・ペテル・モランド/出演:リーアム・ニーソン、ロン・パールマン、ヨロンダ・ロス、ダニエル・ディーマー、フランキー・ショウ/2026年/アメリカ/112分/© 2026 TG Movie LLC. All Rights Reserved./配給:AMGエンタテインメント/10月9日よりロードショー
