1957年12月30日、イングランドのハートフォードシャー州に住む17歳の少女・アン・ノブレットが突然姿を消した。ダンス教室を終えた帰り道、最寄りのバス停で下車した後、近所の少女に目撃されたのを最後に、その消息は途絶えた。
1ヶ月後に発見された遺体は、衣服を整えられ胸の上で手を組んだ状態で、まるで昼寝をしているかのような姿だった。
そして何より戦慄すべきは、死後1ヶ月が経過しているにもかかわらず、遺体が生前とほぼ変わらぬ状態で"保存"されていた点だ。
鮮度を保った「奇妙な遺体」
失踪から1ヶ月後の1958年1月31日、バス停から約11キロ離れたホイットウェル近郊の森で、犬を散歩させていた兄弟が若い女性の遺体を発見した。遺体は失踪時の服をそのまま身につけており、衣服にはボタンの掛け違えなど、一度脱がせた後に誰かが着せたような不自然な痕跡があった。
後の検死で、胃の内容物から失踪当日に口にした食物が消化されずに残っていることが判明。アンは失踪直後に殺害されたと考えられるが、1月のマーシャルズ・ヒース近郊は比較的温暖で、1ヶ月も経過すれば腐敗していてもおかしくない状況だった。にもかかわらず遺体は異様なほど"鮮度"を保っており、警察は死後に冷凍保存されていた以外に説明がつかないと結論づけた。新聞はこの不自然な遺体を大きく報じ、事件は「ディープ・フリーズ殺人」と呼ばれるようになる。
当時、冷蔵庫や冷凍庫はまだ一般家庭に普及しておらず、人体をまるごと冷凍できるサイズの冷凍庫は極めて稀な存在だった。警察は遺体に性的暴行の痕跡があったことから猥褻目的の誘拐・殺害とみる一方、そうした特殊な設備を持つ人物を犯人と疑い捜査を進めた。
(つづく)
