たとえば、親分にご飯を運ぶときは、お茶碗やお椀の口元には触れないよう、底に近いところを持って運びます。食事のおかずは必ず3品以上、手作りのものを用意しなければいけません。そのほか食事でいえば、苦手なものが出たときでも箸を付けたら必ず食べきること、といった決まりがありました。

 先輩が食事をしているときは、たとえ親分がいなくても、タバコをふかすなんてもってのほかです。早く食べ終わっても、親分が食べ終わるのを待ちます。親分が食事を終え、箸を置いてから、若い衆は一斉に「頂きました!」と言って片付けに入るのです。

「極道の飲み会」はなぜ楽しくないか

 月に1、2回、事務所を閉めて組員全員で親分と飲みに行くことがありました。

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 みんなで飲みに行くなんて楽しそうに思えるかもしれませんが、僕は正直、いつも楽しめませんでした。

写真はイメージ(写真:mapo/イメージマート)

 酔って粗相をしてはいけないため、酒を殺して飲んでいたからです。親分は「たくさん飲めよ」と言ってくれるのですが、気を抜くことは一切できません。手には常にライターを持ち、親分がタバコを手に取るタイミングをうかがっていました。

 タバコに火をつけるにもやり方があります。親分がタバコを口元に運んだタイミングで、少し離れた位置からライターの火をつけ、親分に当たることがないようライターの火に手を添えながら、ゆっくりとタバコに火をつけます。タバコが消されたらタイミングを見て灰皿を新しいものと交換します。これは若い衆の仕事でホステスにはやらせません。

 親分がトイレに行くときも若い衆には仕事があります。