彼女は記事が掲載されるものだと信じ、トランプとの不倫疑惑についての自身の発言が制約されるという交換条件を了承して、AMIとの契約書にサインした。しかし、AMIの目的は記事掲載ではなく、記事を未掲載のまま放置することにあった。これは「キャッチ&キル(Catch and Kill)」と呼ばれる記事揉み消し工作の常套手段である。

 実際に2024年4月25日付の記事でCBSが、ナショナル・エンクワイアラーの元発行人でトランプの友人のデヴィッド・ペッカーが、マクドゥーガルの記事の買い取りは大統領選を前にトランプの評判を守るためであったと裁判で証言したことを伝えている。

 なおAMIは、トランプとの間に婚外子をもうけた女性がいる件を口外しないよう、トランプ・タワーの元ドアマンに口止め料の3万ドルを支払ったことも、2018年4月13日付のAP通信で報じられている。

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 しかし、記事が掲載されなかったことで、マクドゥーガルは2018年3月20日にAMIを提訴。2日後にはCNNの人気アンカーマン、アンダーソン・クーパーの番組に出演し、トランプと親密だった期間の詳細を語った。

 その後、提訴から1カ月も経たない4月18日に両者は和解。マクドゥーガルは発言の自由を取り戻し、かつAMIから支払われた15万ドルを維持できることとなった。なお、この訴訟にトランプは含まれていない。

米国史上初の「刑事訴追で有罪判決を受けた大統領経験者」へ

 また、前者のストーミー・ダニエルズにはトランプは口止め料を払って対応した。しかし、このことでのちに、支払いそのものではなく、支払い方法が違法だったとしてトランプ自身が起訴され、有罪となった。これによりトランプは、米国史上初の「刑事訴追で有罪判決を受けた大統領経験者」となった。

 その経緯は次のようなものだ。2023年3月、マンハッタン地方検事局のアルビン・ブラッグ検事が、口止め料の支払い方法がペーパーカンパニーを通したものであり、業務記録の改竄にあたるとしてトランプを訴追した。

 起訴された時、トランプはすでに2024年大統領選(第2期)へのキャンペーンを開始しており、かつ、元大統領への訴追は米国史上初のことであり、有罪となれば最長で4年の禁錮刑となることから米国社会は騒然とした。トランプを起訴したブラッグ検事と家族、地方検事局職員に対する脅迫が相次ぎ、ブラッグ検事には警護が付けられた。

 裁判は2024年4月に始まり、7週間にわたった。トランプは大統領選のキャンペーン中だったが、被告としてマンハッタンの裁判所に毎日出廷しなければならなかった。