動画配信者の牧亮被告(当時32)が、妻のA子さん(当時30)と別の交際相手の女性B子さん(当時29)に対し、長期間にわたって暴力や暴言を浴びせ、性行為動画の撮影とネット販売を強要していた事件。2024年9月、A子さんが脳挫傷で意識不明の重体に陥ったことから捜査が始まり、その過酷なDVとマインドコントロールの実態が明らかになった。
そして2026年10月8日、名古屋地裁は牧被告に対し、懲役13年の判決を言い渡した。二人の女性の人格と尊厳を踏みにじった男の主張と、法廷で語られた被害者たちの悲痛な思いとは。
証人尋問で語られた被害者ふたりの悲痛な思い
捜査の過程で、牧被告とA子さんが住んでいたアパートの名義人が、まったく無関係なB子さんという女性であることが判明した。B子さんへの事情聴取から、牧被告が二人の女性を同時に支配していたという、驚くべき実態が浮かび上がった。
B子さんが牧被告と出会ったのは2018年2月、マッチングアプリがきっかけだった。当時、大学を卒業し保育園で働き始めたB子さんのアパートに牧被告が入り浸るようになり、やがて「お前のせいでクビになった。責任を取れ」などと因縁をつけ、暴力が始まったという。
B子さんの両親が間に入り一度は関係が途絶えたかに見えたが、実際には続いていた。牧被告の要求はエスカレートし、「もっと広い家にしろ」「猫が飼いたい」と言われるがままにB子さんはアパートを契約。その家賃は、B子さんの裸の動画をサイトで売った金で支払われた。嫌だと言えば暴力を振るわれ、親や職場に写真をバラまくと脅された。このアパートが、のちに牧被告がA子さんと新婚生活を送る事件現場となった。
牧被告は、A子さんとB子さんが交際中に送った〈次の撮影会が楽しみでワクワクしています〉といったLINEのメッセージを根拠に無罪を主張したが、法廷に立った二人の証言は、その主張を根底から覆すものだった。
A子さんは、涙ながらにこう訴えた。
「LINEの文面は本心じゃない。そうしないと何をされるか分からない恐怖心があった。あいつが要求することを無理と言うのは考えられなかったし、機嫌が悪くなるとメチャクチャ暴力を振るわれる。私の意見は絶対受け入れられなかったし、人として扱われていなかった。あいつの被害者は私で最後にしてほしい。一生刑務所に入っていてほしいです」
続いてB子さんも、震える声で証言した。
「ずっと別れたい、この関係をやめたいと思っていたのに、その度に脅されてやめることができなかった。暴力はほぼ毎日で、裸にされ、平手打ちされ、握りこぶしで体を殴られ、頭を壁に打ちつけられた。寝るときも逃げられないように手足を結束バンドで拘束されていました。20代のほとんどを牧に捧げて、死ぬような思いで生きてきたので、少しでも報われるように厳罰を求めます」
しかし、被告人質問で牧被告は二人の証言を真っ向から否定。「A子はウソをついている」「B子の主張は逆恨みもいいところ」と述べ、反省の態度は見られなかった。A子さんのアイデアで動画を撮影した、収益は折半していたなどと主張し、母親もまた「こんなことをやる子じゃない」と息子を信じていると証言した。
同年10月8日の判決で、名古屋地裁の蛯原意裁判長は、「交際相手2人に対する性的虐待は、長期間にわたる暴力を背景に行われたもので、被害者の人格や尊厳をないがしろにしたものである」と断罪。被害者の証言の信用性を認め、「被告人は不合理な弁解に終始し、内省も乏しく、再犯の可能性も高い。動機は自己中心的なもので、厳しい非難に値する」として、懲役13年を言い渡した。
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