10月8日の読売新聞社説は「簗農相発言 利益誘導の体質が垣間見えた」。

 政治家が地元に道路やダムを造る予算を持ってきたとアピールする。そうして支持を集める政治は、自民党が長年続けてきたものでもある。読売社説もこの歴史に触れ、簗氏の発言を、支持しなかった住民への「恫喝に等しい」と批判していた。

簗発言をきっかけに見えてきた役所の対応

 確かに、簗氏のおかげで、いろんなものが見えてくるのが今回なのだ。
 
 たとえば沖縄のことも思い出す。沖縄では歴代県政を通じて、米軍基地問題と振興予算の関係について「アメとムチ」という言葉が普通に使われてきた。基地問題で政府と対立すれば予算を減らされ、協調すれば増やしてもらえるのか。実際、先日の知事選で自民党が支援した古謝玄太氏が当選すると、振興予算の増額が報じられた。国の予算とは、政府を応援した地域へのご褒美なのか。反対した地域への罰なのか。

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 10月7日の毎日新聞社説は、簗氏の発言を「税金を私物化する脅しだ」と批判し、こうした疑念が顕著なのが沖縄だと指摘した。前日の沖縄タイムス社説も、予算を人質に自治体や住民を動かそうとする手法は「自民党の体質なのか」と問いかけている。

 簗発言をきっかけに、さらに見えてきたのは役所の対応だ。簗氏からの予算に関する問い合わせは国交省幹部の間で報告されていたのに、記録は作成されていなかったという(10月10日・朝日新聞)。

 理由は「軽微」な問い合わせだったから。果たしてそうだったのか。公文書管理に詳しい情報公開クリアリングハウスの三木由希子理事長は「問題がなかったという説明を裏付けるためにも記録は必要だった」と指摘する。

 記録がなければ、不当な働きかけがあったかどうかも、問題がなかったことも検証できない。簗氏のおかげで、検証すべき対象がまた一つ増えたのである。

 そして、高市人事の「理由」も気になる。

 簗氏は今年2月の衆院選で小選挙区に敗れ、比例復活した。旧安倍派の政治資金問題では1746万円の不記載があり、役職停止6カ月の処分を受けた。一方で、自民党農林部会長などの経験もある。首相は何を評価したのだろうか。旧安倍派の復権を進め、来年の総裁選に向けて取り込む布石のようにも見える。