“時代を作った人たち”の本音に迫る対談企画「有働由美子のマイフェアパーソン」。今回のゲストは、最新作『わたしの知らない子どもたち』が10月16日公開になる、映画監督の西川美和さんです。
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最新作のテーマは「戦災孤児」
有働 最新作『わたしの知らない子どもたち』(10月16日公開)は、トロント国際映画祭のコンペティション部門「プラットフォーム部門」オープニング作品に日本映画として初めて選出されました。この対談の翌日に、カナダ・トロントへ出発されるというタイミングだとか。
西川 そうなんです。
有働 主人公は、1945年の終戦直後の東京で戦争孤児となった12歳の琴子。焼け野原で女性が襲われるリスクを知った彼女は、茂男という名の少年として生きることを決めます。孤児の少年たちと行動を共にして危ない橋を渡るなかで、いろんな大人と出会っては別れ……。
私は観終えて、「戦争が悪い」とだけ言ってしまうのは逃げだと突きつけられた気がしました。戦争を起こした偉い人が悪いということにしたくなるけど、戦争はそこにいた皆で作りあげたもの。でも、何かを守るのも人なのだと感じました。
西川 ありがとうございます。そう捉えていただいたのですね。
有働 西川監督は広島市出身ですが、広島の人だからといって「戦争映画を撮らないのか」と聞かれるのはアンフェアだと過去の新聞寄稿に書かれていましたよね。それでも今回、戦争に関する映画を作ったのは何かを伝えたいと思われたからですか?
西川 私の場合、最初から伝えたいことが明確なわけではなく、題材に興味や疑問が湧くのが先なんです。今回でいえば、戦争孤児。前作の『すばらしき世界』の主人公にはモデルがいるのですが……。
有働 役所広司さんが演じられた天涯孤独の男性のモデルですか。
西川 はい。彼が幼少期、戦争孤児と思しき「浮浪児」の子どもたちと一緒に路上で生活していたという話が、映画の原案である佐木隆三さんのノンフィクションノベル『身分帳』にあります。子どもとは思えないバイタリティと知恵と工夫とで、誰からも手を差し伸べられない中でしたたかに生きていた。短いくだりですけど、「今の私たちが路上に放り出されてもこんなふうに生にしがみつけるかな」と心に残って。現代にはない活劇性を感じました。
有働 活劇性ですか。そこを感じ取るのは映画監督ならではですね。
西川 とはいえ前作で幼年期までは描けず、完成した2020年に次のテーマとして思い浮かびました。当時はコロナ禍で、先行き不明の状況の中、現代のドラマをイメージできなかったのもあります。ただ、戦争孤児を描くには戦争に向き合わなければいけないから「困ったな」と思いました。
