ナチス・ドイツという過去を乗り越え、欧州の民主主義を牽引してきたドイツ。その国民は、歴史の教訓から極右思想に対して厳しい目を持つはずだった。
しかし現実は異なっている。2026年9月6日、旧東ドイツのザクセン=アンハルト州議会選挙で、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が43.8%もの得票率で第一党に躍り出たのだ。なぜ、これほど多くの人々が、「極右」のレッテルを貼られた政党に一票を投じたのか。その背景には、メディアが報じる「排外主義」という単純な言葉では片付けられない、ドイツ国民の複雑な本音があった。(全2回の1回目/続きを読む)
(初出:「文藝春秋PLUS」2026年9月24日配信)
「自分が極右ではないのだから…」
「自分が極右ではないのだから、自分が投票する政党も極右であるはずがない、と考えている人もいます」
ドイツ出身の文筆家マライ・メントライン氏は、AfD支持者の心理をこう分析する。AfDは憲法擁護庁から数年にわたる監視の末、「極右」と認定された政党だ。ホロコーストを否定するかのような発言や、過激な反移民発言が問題視されてきた。それでも4割以上の人々が投票した事実は、支持者と極右思想が単純にイコールで結ばれるわけではないことを示唆している。
マライ氏によれば、支持者の多くは、自らを極右だとは認識していない。むしろ、彼らを突き動かすのは、イデオロギーよりも既存政党に対する強い不満だ。あるデータでは、AfD支持者の49%が、既存政党に「罰を与えたい」という意識で投票しているという。
「LGBTQはうざい」発言の裏に
マライ氏が最近ドイツで会話した、AfD支持者と思われる人物の言葉はさらに生々しい。「自分の意見が言えなくなった気がする」と彼はこぼしたという。移民が多すぎると口にすればすぐに反論され、意見を封殺されてしまう。そうした鬱憤が溜まっているのだ。そして、彼はこうも言ったという。「LGBTQはうざい。声が大きすぎる」
この辛辣な言葉の裏には、一体何があるのか。マライ氏は、そこに根深い嫉妬と疎外感があると見る。
