正気を失ったジョニーは…
正気を失った状態で、ジョニーは血が流れる右手の指先を、部屋にあったシンナーと油絵の具に浸し、部屋の中に落書きをし始めた。絵を描くのが好きなアンバーのために、この借家にもアートスタジオを設置し、キャンバスや絵の具を置いていたのだ。
ジョニーは、ある疑念に取り憑かれていた。2014年に撮影された「ロンドン・フィールズ」で共演したビリー・ボブ・ソーントンとアンバーとの関係だ。
それで、マスターベッドルームの鏡に、「Starring Billy Bob, Easy Amber(主演はビリー・ボブと尻軽のアンバー)」と書き殴った(後に、ビリー・ボブは、アンバーとは仲良くもならなかったと、疑惑を完全に否定している)。
アンバーは有名になるために自分を利用したのだと気づいていたことから、ランプシェードに「Good Luck and Be Careful at the Top(幸運を祈る。頂点まで昇り詰めたら気をつけろ)」と皮肉めいた言葉も書いた。別れ際にもよく使われる「Good Luck」をあえて書いたのは、この時すでに心の中で離婚を決めていたからだ。
「もう終わりだ」
その気持ちは、身近な人物にも伝えた。怪我をした直後、キッパー医師に送った助けを求めるメッセージに、ジョニーはこう書いた。
「もう終わりだ。侮辱され続けて、貶され続けてきて。(中略)彼女は、愛しているはずの男を傷つける。自分が一番大事なんだよ。成功して有名になりたくて仕方がない。そのために俺を獲得したのさ。(中略)なんて悲しいんだ。俺の指先は切断された。どうすればいい? 病院に行くのは当然として。彼女と一緒に(結婚に)飛び込んでいったことを恥じている」
遠く離れたロサンゼルスにいるクリスティには、「ポストナップのことはもういい。それより結婚の取り消しについて調べてくれないか?」とメッセージを送った。
アメリカでは、婚姻が強制されていた場合などに、離婚という形ではなく、結婚自体をなかったこととして取り消す「アナルメント」という手続きを取ることができる。遠くにいる姉を心配させないように、あえて怪我については触れなかった。
