親たちのクレームで解雇される
また、「あんな先生に子供を任せるわけにはいかん」と、生徒の親たちが苦情を言ってくる。こうなると当事者に厳しい処分を下さねば事は収まらない。ある日の放課後、千代は校長から呼ばれ、「あなたにはこの学校を辞めてもらわねばならん」いきなり解雇を通告された。
校長はさらに、「東京に行って学ぶために教師を辞める。そういうことにしておきましょう」とつづけた。学校の面目(めんぼく)を保つため、また、千代の世間体も少し考慮して、表向きは自主退職ということにしたいようだった。
翌日には校庭に教師と生徒一同を集め、千代は別れの挨拶をしてそのまま村を去る。
そんな手筈が整っていた。学校としては一刻も早く千代を村から追い出し、村人や生徒たちの脳裏からその存在を消し去りたいと思っている。しかし、最後の最後まで、千代は彼らの常識では理解できない異人種だった。予想外の行動で、校長たちの入念な準備は台無しになる。
最後の登校日は派手さマシマシ
翌朝、校長は挨拶の内容を打ち合わせるために校門の前で千代を待っていたが、登校してきた彼女の姿を見て腰を抜かさんばかりに驚いた。いつも以上に濃く念入りに化粧をしている。結った髪を桃色の結綿でまとめたヘアスタイルや服の柄はいつも以上に派手で、カフェーの給仕や芸者のようにも見える。
反省の態度を示すために、教師らしく清楚で地味な服装で現れるだろう……と、思っていた校長の期待は裏切られる。解雇が不服で反抗的になっていると勘繰った。このまま挨拶させれば、生徒たちを前に何を言いだすかわからない。人前に出したら危険と判断し、用務員室の小部屋に連行して監禁した。
千代は放課後まで人目にふれぬよう用務員室に閉じ込められて、追い払われるようにして橋を渡り村から追放される。恋人の男性教師とは一度も会うことができず別れることになった。そのことだけがとても心残りだった。