俺たちの渡部篤郎は、本来、伝家の宝刀のような俳優だった。ここぞという作品で、ここぞという役で活躍する最強の刃。

渡部篤郎 ©時事通信社

 当たり役は1999年の『ケイゾク』の刑事・真山徹。それから2009年のNHK土曜ドラマ『外事警察』の公安の魔物と呼ばれる住本健司。渡部の演技はいつも空間に緊張感をもたらし物語の密度を高めてきた。

 ところが、近年の渡部篤郎はここぞ、というより、常に出しっぱなしの刀になっている。

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渡部篤郎フィーバーで常に「出っぱなし」

 2025年はDMM TVの『幸せカナコの殺し屋生活』で殺し屋会社の社長を演じ、フジテレビ水10『Dr.アシュラ』では主人公の師匠、WOWOW『怪物』の“正義”という名の警察庁次長、そして映画『爆弾』では捜査一課のエリート交渉人役で、佐藤二朗の怪演を貫禄たっぷりに受け止めた。

 2026年に入ると、さらに彼を見る機会が増えた。ムロツヨシ主演のスペシャルドラマ『うちの弁護士はまたしても手がかかる』の大御所俳優役にはじまり、1月期は玉木宏主演の木曜劇場『プロフェッショナル 保険調査員・天音蓮』で玉木演じる主人公のバディ。7月期の小池栄子主演の火9『さよならノワール』では主人公のかつての上司で、失踪した後、過去の記憶を失って現れるという謎めいた役だった。

 秋はさらに出ずっぱり。9月17日にはNetflix『ダウンタイム』とDMM TV『幸せカナコの殺し屋生活2』が同時にスタートし、28日には連続テレビ小説『ブラッサム』で朝ドラ初出演、そして10月7日からはじまったフジテレビ水10『ポリティカルパン』では謎の情報屋・乾役で出演している。

『ブラッサム』主人公の父・清治 『ブラッサム』公式Instagramより

『ブラッサム』や『ポリティカルパン』の番宣番組にも出ていて、最近はとにかく渡部篤郎の顔を見る機会が多い。フジテレビ系の連ドラだけで1年半に4本も出ている。こうなると出しっぱなしの刀というよりも高級な包丁。料理上手な人が器用にレストラン級の料理を作るときの必需品。そんな感じは悪くはない。

 だが、どの作品でもたいてい「信頼できる上司」「ワケありの年長者」「権力側の重鎮」として存在していることが、余計なお世話だが気にかかる。ラスボスかそうでないかの違いはあれど、ある種の安心感を与える役割を任されるようになっているのではないだろうか。本来、渡部篤郎の魅力は、ぐらぐらと足元が揺らぐような不安感だったはずなのに、いつの間にか、渡部篤郎ならこんな役、と安心して見てしまうのだ。