パラリンピックの開会式で「なにこれ、何が起こってんの?」

――そして、正式に依頼を受けてパラリンピックを撮ることになったと。開会式はいかがでしたか。

越智 ほんとに今考えたらばかみたいなんですけど、「笑顔」ですね。選手たちの笑顔にびっくりした。オリンピックと同じように最初にセレモニーがあって、オーストラリアのストーリーみたいなものが流れたあとに選手団が入ってきて。その中で、今でも忘れられないんですけど、松葉杖を使った選手が、その松葉杖を横に置いて、逆立ちしてぴょんぴょん跳ねながら手を振っていたシーンとかは、もうカメラを構えずぼーっと見てました。

――何が起こっているのか、と。

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越智 「なに、なにこれ、何が起こってんの」みたいな感じでした。オリンピックの開会式とは全然、空気感が違いましたね。

 オリンピックの開会式も行っているんですけど、演出とか、その国のストーリーを見せたりっていうところはそんなに変わらなかった。ただ、パラリンピックに関しては、さっきお伝えした「笑顔」、これがもう全部僕の頭の中を支配しちゃって、ほかのことをそんなに覚えてないんです。

エジプトのイブラヒム・ハマト選手。ラケットを口にくわえてプレーし、右足でボールを上げてサーブを行う ©︎越智貴雄

――競技の撮影で印象に残っているシーンはありますか。

越智 何もかもがまず新鮮だったんですけど、特に印象に残っているのは片足切断の選手です。膝より上で太ももから足を切断した選手が、片足でけんけんしながら走り高跳びで1メートル80センチを簡単に、ぴょんとベリーロールで越えていったんです。

「え、うそやろ」みたいな。「こんなことできんのかな」って。

 

気付いたら車椅子の選手を這いつくばって下から撮っていた

――健常者のスポーツを撮るのとは、撮り方も変わるのでしょうか。

越智 変わらないっちゃ変わらないんですよ。4年に一度、世界最高峰の舞台で自分のパフォーマンスを最大限発揮するっていう、そのスポーツの本質的な部分は何も変わらない。

 ただ、撮影に関してだけ言うと、変わる部分はありました。

――具体的には。

越智 例えばなんですけど、車椅子の選手を撮るとき、立って撮っていると絶対に顔が見えないんです。顔が見えるように姿勢を変えていったら、気付いたら這いつくばって下から撮っていた。