「スポーツをしなければ輝けない」“逆のプレッシャー”という問題

――その変化の大きなきっかけとして、2012年のロンドンパラリンピックがあったと思います。「スーパーヒューマンズ(Meet The Superhumans)」というCMも話題になりました。

越智 大きいと思います。やはりメディアの影響ですね。あのCMも、結局のところ選手たちが「自分たちはかわいそうな弱者じゃない」と表明するっていう、言ってしまえば社会運動的なところがあったと思うんです。

――ただ、一方で「障害のある人はスポーツをしなければ輝けない」といったような、逆のプレッシャーを生んだという指摘もあります。

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越智 実はロンドンパラリンピックのことは、大会が終わったあともずっと調査をし続けてるんです。最初の頃は、特に障害のある子どもたちが「みんなスポーツをしなければいけない」みたいな、周りからの逆バイアスでストレスを抱えたという話がありました。これは2021年の東京大会でも同じようなことが起きています。

 ですが、2年おきぐらいに取材を続けて、2020年くらいになると、ロンドン大会があったことで、もちろん良くないこともあったし、押し付けみたいなこともあったけど、法律が変わったり、建築がバリアフリー化されたり、スポーツ環境が整えられたり、総合的に見るとプラスの面のほうが多かった、という話に変わってきていました。

――ロンドンがなければ変わらなかった部分も大きかった。

越智 そうですね。そういった部分では、大きなきっかけだったと思います。

パラスポーツから離れたことだと非難も浴びた『切断ヴィーナス』

――越智さん自身も、義足の女性たちの魅力を発信する『切断ヴィーナス』というプロジェクトで、まさに社会の価値観に揺さぶりをかけました。

越智 最初は「なんでパラスポーツから離れたことをするの」って非難も浴びたんです。でも、僕の中では全然ぶれてないんですよね。

 パラアスリートを見ていて、「義足はかっこいい」ということを知っていたのが一番大きかったです。

『切断ヴィーナス』を出版した2014年、義足っていうと「怖い」ものだったんです。「かわいそう」でもなく、「怖い」。周りの友人に聞いてもそうでした。でも僕だけは、なぜか「かっこいい」と思っていた。

『切断ヴィーナス』より金子美南海さん ©︎越智貴雄

 それは僕が見ていたのが、パラアスリートというかっこいい人たちが身につけている、かっこいいものだったからというだけなんですけど。それを知っていたのは、何より大きかった。

――価値観は、時と場所によって変わると。

越智 美しさもそうだと思うんですけど、時と場所、その人が受けた経験によって物の捉え方って全然違うなっていうのは、海外の取材でよく感じていたことでした。例えば僕の身長は176センチなんですけど、ある国に行くと「高いほうだね」って言われるけど、別の国に行くと「身長低いね」ってちょっと小馬鹿にされる。物差しが全然変わるんです。

 その経験が、『切断ヴィーナス』の前にありました。

写真=釜谷洋史/文藝春秋

次の記事に続く 「障害を売り物にするなよ」義足女性アスリートのセミヌードも…写真家・越智貴雄(47)がそれでもパラスポーツを撮り続けるワケ

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