去る9月25日、今年『黒牢城』でヒットを飛ばした黒沢清監督が第48回ぴあフィルムフェスティバル2026(国立映画アーカイブ=東京・中央区)に登場。特集企画「『アーカイブ』はタイムマシーン!!」の「こんなの知らなかった! ~日本の個性溢れるアーカイブ」で、国立映画アーカイブを担当。同アーカイブの所蔵作品から3本を選んで上映、トークイベントを行った。上映されたのは、かねて黒沢清監督が「日本三大歌合戦映画」と呼んでいる『鴛鴦歌合戦』(1939年)、『たそがれ酒場』(1955年)、『日本春歌考』(1967年)。上映後、講義形式で行われたイベントで、黒沢監督は時折歌声を交えつつ、「歌合戦映画」の魅力を語った。
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歌合戦映画とは何か
まず黒沢監督は、こう口火を切った。
「本日ご覧いただいたこの3本の映画を、僕は勝手に“日本三大歌合戦映画”というふうに呼んでおります。もちろんこの3本以外にもこのような映画はあるのかもしれないんですが、僕がこれまでに見てきた日本映画の中でこの3本はやはり歌合戦映画としては別格と言っていいかと思います」
まず、“歌合戦映画”とは何か。黒沢監督は、人が歌う映画あるいはミュージカル映画はもちろん数多くあるとして、ジャック・ドゥミの『シェルブールの雨傘』、バスビー・バークレーが編み出したハリウッドの絢爛豪華なミュージカル、フレッド・アステアに代表される軽快なダンス映画のほか、邦画では須川栄三の『君も出世ができる』や加藤泰の『真田風雲録』などを挙げた。ミュージカル以外でも、劇中で歌手や俳優が歌っているシーンはトーキーの到来とともに映画の中で広く繰り広げられてきた。
「そういった、人が歌う映画の中でも、“歌合戦映画”というのは取り分け独自のポジションを占めていると僕は考えています。“歌合戦映画”では物語の重要な構造の中に、必ず2つの相反した思想があって、それらが決定的に対立してしまうか、あるいは奇跡のように和解するか、そういったドラマを物語のクライマックスに持ってきて、まさにその瞬間を歌で表現している――これが“歌合戦映画”というものだと、僕は規定しています」

