「老後不安が一切ない人間」になった稲垣えみ子さんが、誰もが避けて通れない「老い」や「死」をテーマに人生を「楽しく下る」ための極意を伝授する、まったく新しい“老後準備”エッセイ『死ぬ練習帖』。発売即大重版となった本書の中から、「はじめに 人生を「下る」という鉱脈」を抜粋してご紹介します。(全2回の1回目/2回目を読む)
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そもそも一体いくらあれば不安から解放されるのか
いま私は、将来の不安を一切持っていない。
ちなみにいまの私は61歳なので、私の「将来」とは、いわゆる老後である。ってコトはすなわち、私は老後不安のない人間なのだ。自分で言うのも何だが、老いも若きもおしなべて「老後が心配」と口にする時代、これはかなりスゴイことではなかろうか。
……という話をすると、大体皆さん、同じ反応をする。
「それは……よっぽどお金を持っているんでしょう!」
なるほど。確かに現代の老後不安とはまずはお金の不安。だって少子高齢化で年金の将来はおぼつかなくなる一方な感じなのに、まさかの人生100年時代ですからね。長ーい長ーい老後を生き抜く資金をどう確保するかは、確かに切実な関心事であろう。
ただ具体的に考えると、そもそも一体いくらあれば不安から解放されるのか。実は、ここからして案外ムズカシイ。
まず自分がいつまで生きるのかがわからないし、どういう恐ろしい病にかかるかもわからない。すなわちどれだけお金を貯めても足りないような気しかしない。
さらに、いくらお金が心配だからと言っても、その心配を減らすために毎日の生活を切り詰めすぎるのもどうなのかという問題もある。時には旅もしたいしオシャレも外食も楽しみたいし孫にイイ顔もしたい。そうじゃなきゃ一体何のために生きているのやら……いやしかしそうは言ってもやはり将来のために貯めなければ……いやでもやっぱりちょっとは使いたい……などと考えていくと、ますます何をどうしていいのやらわからなくなってくる。
