「老後不安が一切ない人間」になった稲垣えみ子さんが、誰もが避けて通れない「老い」や「死」をテーマに人生を「楽しく下る」ための極意を伝授する、まったく新しい“老後準備”エッセイ『死ぬ練習帖』。発売即大重版となった本書の中から、「はじめに 人生を「下る」という鉱脈」を抜粋してご紹介します。(全2回の2回目/1回目から読む)
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人生の後半は、下り坂を着々と下っていく時期
老いも死も、生きていれば誰の人生にも必ず訪れる「当たり前のこと」なはずである。その当たり前のことがこれほどまでに残酷で辛いことだなんて、私は全然知らなかった。
――っていうか、それってそもそも何かおかしくないか?
当たり前のことは、当たり前にやり過ごすことができるのが当たり前のはず。つまりは、本当の問題は老いでも死でもなくて、それを辛いとか絶望とかと結びつけてしまう我らの心のありようなんじゃないのか?
ってことで、私は「絶望しない心のありよう」を一生懸命考えた。そしてようやく、先ほど書いたアイデアを得たのである。すなわち、老いの不安をなくすには、まずは老いを受け入れること――すなわち、老いや衰えを悲しむのではなく「上等!」と捉える新たな価値観の創造なんじゃないか。
具体的にはこういうことだ。
人生を山登りに例えるなら人生の前半は上り坂だ。お金もモノもステイタスも、より多く、より高みを求めて上へ上へと頑張る時期である。そうして頂点に立ったら、今度は下りだ。そう人生の後半は、下り坂を着々と下っていく時期なのだ。まずはこれを否定したり悲しんだりするのではなく、真っ直ぐに認め肯定してしまおうと言いたいのである。これが「老いを受け入れる」ということに他ならない。
するとですね、ああなんということでしょう。たったこれだけでアラ不思議! 全ての不安がパタパタと音を立てて反転していくのであります。
