認知症の母が教えてくれたこと

 私がそのことに気づいたのは、我が母の老いがきっかけだった。

 母は80歳を前にして認知症になり、困った父は母を一生懸命病院に連れて行き、薬を山ほどもらい、脳トレ本を買いまくったが、残念ながら母が「よくなる」ことはなかった。なぜって、病気は治る(こともある)が、老いは決して治らないのである。

写真はイメージ ©graphica/イメージマート

 それは我が家族が、そして私が直面した初めての冷酷な事実だった。その圧倒的な現実は我らをじわじわと、そしてどこまでも追い詰めた。お金も努力も全てが無効。何をどうしようが、手も足も出ず、確実に悪くなっていく母の現実を永遠にガーンとなりながら眺め続けるしかない日々。それは、ただただ、あまりにも、あまりにも辛かった。

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次の記事に続く 「本当の問題は老いでも死でもなくて…」「人生の後半戦では…」元朝日新聞“アフロ記者”(61)が発見した、“残酷で辛い老後”に絶望しないための“新しい価値観”